サツマイモ“基腐病”拡大 「いつやめても…」現場の窮状

サツマイモの立ち枯れなどを引き起こす「基腐(もとぐされ)病」の被害が、主産地の鹿児島、宮崎両県を中心に拡大している。産地では収穫量の減少で離農に拍車が掛かっているほか、市場での取引価格も高値に。原料として大量のサツマイモを使う焼酎メーカーも対策に乗り出している。

 「国の補助金や収入補償で持ちこたえているが、なければみんないつやめてもおかしくない状況だ」

 地域の農林水産物・食品のブランドを守る地理的表示(GI)保護制度の対象にもなっている「ヤマダイかんしょ」の産地である宮崎県のJA串間市大束の担当者は窮状を訴える。

 基腐病はカビの一種の糸状菌による感染症。同JA管内では今年、作付けした畑の7〜8割で被害が出た。例年は10、11月が収穫のピークだが、被害が拡大したため9月でほぼ終えた。2019年に初めて同県で基腐病が発生して以降、離農する人も相次ぐ。サツマイモの生産農家は125人と発生前から約3割減少し、作付面積は280ヘクタールと半減するなど危機に立つ。
 生産量で全国の3割を占める鹿児島県でも、県の9月の調査で約6600ヘクタールと作付面積全体の6割で発生を確認した。8月中旬の長雨で菌が拡散したとみられている。

 福岡大同青果(福岡市)によると、サツマイモの入荷量が減り、取引価格も上昇傾向にある。農林水産省の調査では、11月上旬の福岡市中央卸売市場のサツマイモ平均取引価格は1キログラム279円と、前年同時期と比べ10%上昇している。

 薩摩酒造(鹿児島県枕崎市)は、寒い時期に基腐病の被害が増えることから、農家に栽培時期を早めてもらい、例年は8月のお盆明けから始める仕込みを2週間前倒しした。

 自社蒸留所の畑で育てたウイルスフリーの苗を農家に渡したり、農家が行う種芋の消毒に協力したりといった対策も検討している。「菌に強い品種改良の研究成果が出るまでは、農家と情報を密にしながら、いかに病気の被害を抑えて産地を守るかを考えていきたい」(同社)とする。
 農水省などによると、基腐病は九州では熊本、福岡、長崎の各県でも確認されているほか、今年に入って全国2位の産地の茨城や同3位の千葉などでも見つかり、22都道県に広がる。感染した種芋や苗によって広がったとみられる。

 農水省や農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は、(1)種芋や苗の消毒の徹底で「持ち込まない」(2)発病した株の早期抜き取りなどで「増やさない」(3)土の中に感染したイモのつるや根を「残さない」−の3点を軸に農家に対策を求める。サツマイモ以外の作物には感染しないため、翌年は別の作物を育てる「輪作」なども促していくとしている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b2ddc48d36a823b5f636797a8731519d9a5420f0