
世界の最新科学をリードするアメリカで、鍼治療の導入が進んでいることをご存じだろうか?
最近、アメリカ内科学会のガイドラインでは「腰痛」への鍼治療が推奨され、メディケア(65歳以上の公的医療保険制度)でも鍼治療が採用されている。
さらに驚くのは、世界最強のアメリカ軍で行われている鍼治療だ。なかでも、耳に鍼を刺す「耳鍼」を使って痛みを緩和する治療法は「戦場鍼(バトル・フィールド・アキュパンクチャー)」と呼ばれ、戦場での応急処置を主眼として研究と導入が進んでいる。
こうした動きの背景にあるのが、アメリカ社会で大きな問題となっている「オピオイド(鎮痛薬)」の乱用問題だ。
腰痛などの体の痛みを止める薬によって、薬物中毒が多発。
年間数万人の死者がでるなど深刻な被害が続いている。そこで、薬物に頼らず「腰痛」を緩和する手段として、鍼治療の研究と導入が急ピッチで進んでいるのだ。
慢性腰痛患者の約3割を苦しめる原因。
それは、「脳」の変化にある。
近年、さまざまな脳科学研究によって、慢性腰痛の患者では、痛みを感じる機能が変化し、痛みを過剰に感じているケースがあることが分かってきているのだ。
そして最近、鍼治療が「脳」の働きを改善し、慢性腰痛を改善するメカニズムも明らかになりつつある。
アメリカ・ハーバード大学のジャン・コン准教授らが2020年に発表した研究では、慢性腰痛の患者に鍼治療を行った時の脳の働きをfMRIを使って詳しく検証。
すると、症状が改善した患者では、脳の痛みを抑制する機能の中心であるPAGに変化が確認された。
PAGと脳内の痛みに関わる部位のネットワークが強化、つまり、痛みを抑制する働きが回復していたのだ。
「慢性腰痛に対する鍼治療の効果に、疑う余地はありません」と断言するコン准教授。
いまや、「東洋医学」は怪しいものではなく、科学的にも効果が裏付けられた治療法として認められつつあるのだ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/0fd80ec80ae5d417ed8576084141bcbb86ce05f5