「全身真っ黒に…」命懸け、消火続けた祖父犠牲に 5人死亡火災
https://news.yahoo.co.jp/articles/a86b936b971e1ea12ce17109c51d61466c435e6a

「もうやめちょきっ」。
制止も聞かず、炎が上がる自宅に水を掛け続けた。
中には妻、四女、長男、そして3歳の孫がいたとみられる。
命を懸けた消火活動が、坂本憲介さん(69)の最期の姿となった。

7日朝、福岡県嘉麻市の住宅街で4人の遺体が見つかった火事現場。
週末を共に過ごした「仲良し家族」を猛火がのみ込んだ。
駆け付けた親戚や近所の住民らはなすすべなく、焼け崩れる家屋を見守るしかなかった。

「全身真っ黒になって水を掛けていた」。
ボンボンと大きな音が響いた現場で、必死に火を消そうとする坂本さんを見たという近所の男性(72)は証言する。
大やけどを負い、担架で運び出されながらも「大丈夫、大丈夫…」と周囲に気を配っていたと、別の住民も明かす。
午後1時28分、坂本さんは搬送先の病院で息を引き取った。

「家族を助けたかったんでしょう」。
坂本さんが勤めていた会社の社長(54)は思いやった。
隣の同県桂川町の建設会社で最年長ながら毎朝午前7時すぎに一番早く出勤し、
仕事に精を出す「頼れる職人だった」という。
朝から姿がなく、心配していたところ悲報に接し「パニックになった」と顔をゆがませた。

「孫を家族全員でかわいがり、まるで漫画『サザエさん』のような、うらやましいほどの仲良し家族だった」。
一家を知る近所の女性(31)は話す。息子が孫と同じ保育園に通っており
「息子に(火事のことを)伝えるのがつらい」と声を詰まらせた。
近隣では「長男は子どものために仕事を掛け持ちして昼も夜も働いていた」
「四女も孫と一緒によく遊んでいた」との声も聞かれた。
看護師として働いてきた妻は脚を痛めていたといい「逃げ遅れたのではないか」と話す住民もいた。

近所の田中末勝さん(68)は年末年始に、坂本さんが孫の三輪車を押すのを見掛けた。
火災前日に会った際、坂本さんは「仕事は朝早くて大変だけど、孫のために頑張らないと」と話していたという。

(大橋昂平、坂本公司)