大量の外国産輸入アサリの産地が「熊本県産」と偽装されていた問題で、旬を迎えた県産ハマグリの入札が中止になったり、大量の返品が出たりするなど思わぬ余波が出ている。地元漁協は「うちのハマグリは正真正銘の熊本産」。この時期は例年1キロ当たり2千円ほどの高値で取引されるといい、漁業者からは落胆の声が上がっている。

 「ひな祭り前で需要が高まる時期なのに…。残念でならない」。熊本市南区の川口漁協で担当者はカレンダーを見つめながら、ため息を漏らした。県産ハマグリは例年2月ごろが最も高値になるといい、一度の入札で5000万円程度の取引が期待される。アサリの出荷が停止される中、漁業者にとって当面の生活をしのぐ頼みの綱だった。

 アサリの偽装問題が表面化した1月下旬以降、県内外の7業者が「熊本産の商品が売れず、在庫を抱えている」などとして入札を辞退。今月6日には「店舗が取り扱ってくれない」と、3日前に出荷したハマグリ約1・9トンが返品され、漁場に戻すしかなかった。

 県によると、偽装問題に関連した返品は初めて。アサリと同じ貝類のため、産地偽装が持ち上がった熊本県産を敬遠する消費者が多くなったことが原因とみられる。

 県漁業協同組合連合会(県漁連)は、参加業者がいなくなったとして10日の入札を中止。在庫を抱えた業者が多く、入札再開は見通せないという。