為替介入「必要ない」、円急落も市場秩序保つ IMF高官:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA231950T20C22A4000000/

国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局のサンジャヤ・パンス副局長が日本経済新聞の取材に応じた。外国為替市場で急速に進む円安を巡り「現時点で為替介入の必要はない」と語った。

――日本政府が円安を食い止めるために為替介入をすることの是非をどう考えるか。

「通貨を安定させるための介入は、市場が無秩序になり始めたときに実施すべきだ。円相場はかなりの速さで動いているが、市場は円滑に機能している。今のところファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映した形で円は動いている。無秩序になっていないのだから、安定させようとする必要はない」

――円安と経常収支の悪化が連鎖する円安スパイラルの可能性を指摘する声もある。

「根本的な懸念とは考えていない。円安で輸入品の価格が上がり、貿易赤字になったのは事実だ。同時に輸出も増え、双方向に作用している」

――円安の一因となっている金融緩和政策を見直す必要はないか。

「現在の政策を変更する必要はない。今後数カ月間は燃料費の上昇や昨年の携帯電話料金の引き下げの影響が消えることでインフレ率が一時的に上昇するが、また下がると考える。2%の目標を持続的に超えていくまでは、金融政策の変更は勧めない」

――日本の物価が上がりにくい要因をどうみるか。

「一つには期待の低さがある。非常に長い間デフレが続いたため、人々のインフレ期待があまり高まらない。1990年代前半のバブル崩壊以来、大きなインフレを経験したことがない人が多い。もう一つは賃金だ。日本は諸外国のように物価変動を迅速に反映できる賃金のしくみになっていないようだ」