若者以上に深刻な「40代以降の親ガチャ」問題
資産格差を考えるうえでは、「親のカネ」は避けられない。

最近は子供が生まれてくる親や家庭を選べないという意味合いで“親ガチャ”という言葉が使われるが、「実は親ガチャが最も残酷な差を生んでしまうのは、40代なんです」と話すのは、経済学者の飯田泰之氏だ。親の資産の有無で、40代以降の資産に大きな差が出てくる。

「親から子供に相続される目に見える部分では、金融資産以外に土地や住宅も大きいです。実際に住居用の不動産の場合、相続課税は330u以下であれば80%の減額で節税の優遇を受けられます。東京の都心部で一戸建てを所有している親のもとに生まれるかどうかで、生涯年収が1億円変わるとも言われているほどです」

介護費用を誰が負担するのか?
40代超からでは年収の上げ幅は狭く、資産を運用する時間も短い。さらに、親が資産を持たずもらえる年金も少なければ、今度は介護費用などの負担が出てくる。

「介護費用を両親がしっかり備えているか、子供が負担しないといけないかでも大きく変わってきます。低収入世帯だと、老後に向けての貯蓄までは手が回らないケースも多いでしょう。そんななか、仮に両親の介護が夫と嫁のダブルで乗っかってきたとしたら、家計も心身も破綻リスクが一気に高まってしまう。一度崩れてしまうと立て直すことが非常に難しく、そんな状況では金融資産を積みようがない」

最も差が生まれるのは「年金額」
また、親から子供に受け継がれる負の資産がある。

「老人世代の無年金は、2割に上ります。つまり、最も差が生まれる部分であり、目に見える資産以上に人生の分岐点になることが多い。」

いくつになっても親は親。何でも親のせいとは思いたくないが、努力だけではどうしようもない格差があるのも事実なのだ。

【経済学者・飯田泰之氏】
明治大学政治経済学部准教授。専門はマクロ経済学、経済政策。内閣府規制改革推進会議委員などを歴任。近著『日本史に学ぶマネーの論理』(PHP研究所)