年金給付額の下落が止まらない…40代が悲惨な老後を避けるための「3つの大原則」

厚労省の「財政検証」は、2040年の年金受給額は15%前後目減りし、2060年には30%ほど目減りすると予想している。現役世代の老後はこれからどうなるのか。

(中略)

実質的に年金をカットできる「マクロ経済スライド」

日本の年金は、もともとは「物価や賃金が上がれば、それに応じて年金額も上がる」という、物価スライド、賃金スライドを採用していました。

けれど、年金行政の見込み違いや無駄遣いなどで年金財政が逼迫ひっぱくし、物価や賃金が上がったぶんだけ年金を増やしていくと、将来、年金原資が枯渇こかつしてしまうという恐れが出てきました。

そこで小泉純一郎内閣(当時)は、2004年の年金改革で、物価や賃金が上がっても、年金がそこまで上がらない仕組みを導入しました。これが、「マクロ経済スライド」です。

(中略)

マクロ経済スライドが導入される前は、10万円だったものが次の年に11万円に値上がりするという物価上昇が起きたら、これに応じて10万円の年金が次の年には11万円に増えていました。これが、「物価スライド」です。

ところが、そうやって年金をどんどん支給していくと、将来、年金をもらう人たちの年金原資が枯渇してしまうという状況が出てきて、慌てた政府は、どうすれば支給額をカットできるのかと考えました。

そこで登場したのが、10万円のものが次の年には11万円になっても、年金の額を1万円増やすのではなく、調整して5000円だけ増やす(イメージ)という方法です。

つまり、物価や賃金の上昇ぶんよりも年金が上がる率のほうが低くなるので、実質的には年金をカットできるというのが「マクロ経済スライド」です。

国は、この「マクロ経済スライド」で徐々に年金を実質的に目減りさせていって、年金財政を立て直すつもりでした。

ところが、予想外だったのは、デフレが長引いて物価が上がらなかったために、マクロ経済スライド自体が発動されないという状況が続いたことです。

マクロ経済スライドは、2004年以来、3度しか発動されていません。消費税が引き上げられた翌年の2015年と物価が上昇した2019年、2020年です。

そのため、実質的な年金カットが進まず、2021年に、さらに新しいルールに沿って年金を支給し始めました。

それは、賃金と物価の両方から年金の支給額を決めるのではなく、物価がどんなに上がっていても、賃金が下がっていたら、年金も賃金に合わせて支給額を下げるというものです。

そのため、2021年度の年金額は、物価が下がっていないのに、賃金が0.1%下がったので、賃金の値下がりに合わせて年金も0.1%下がりました。

2022年の年金給付額はさらに下落する可能性
困るのは、2022年の「年金給付額」です。

2021年から、原油高や世界的な気候変動などの影響で、原油価格や食料品の価格が高騰し始めました。

(中略)

以前は、物価が上がれば、物価の上昇ぶんほどではないにしても、年金も上がることになっていました。少なくとも、これだけ物価が上がっているのに、年金給付額が下がるということはなかったのです。

ところが、前述した新しく始まったルールに従うと、どんなに物価が上昇していても、賃金が下がれば年金給付額も下がることになります。実際、コロナ禍で財政状況が悪化する企業が増え、賃金が下がりました。

その影響で、2022年度の年金給付額は、なんと0.4%も下がりました。

こうして、年金は破綻しませんが、もらえる年金は、実質的には目減りしていくことが避けられなくなっています。

(中略)

危険な老後を避けるための3つの原則

日本年金機構の「年金ネット」に登録すれば、40歳でもウェブで年金額の見込みを試算することはできます。ただ、年金をもらうのが30年後ということになると、その時の状況などは誰もわかりません。

ですから、もらえる年金はざっくり今の収入の4割ほどと見込み、あとは、次の3つを徹底しておきましょう。

①70歳まで働く
②夫婦で働く
③住宅ローンなどを返しておく

(中略)

以上、3つのことをやっておけば、もらう年金額が多少減っても、慌てることはないでしょう。

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