クラスメートを「あだ名」で呼んだり「呼び捨て」にしたりせずに、「さん付け」するように指導する小学校が増えている。身体的特徴を 揶揄やゆ するようなあだ名は、いじめにつながるケースがあるからだ。ただし、さん付けは円滑なコミュニケーションを阻むおそれもあり、有識者は「『さん付け』を求める場合は、きちんと理由を説明してあげてほしい」と指摘する。

 文部科学省の問題行動・不登校調査によると、全国の小学校でのいじめ認知件数は増加傾向だ。2020年度は42万897件の報告があり、このうち約6割が「冷やかしやからかいなど」だった。

 児童同士の呼び方について、文科省では指導はしておらず、担当者は「あだ名にはプラスとマイナスの両面がある。相手をどう呼ぶかは、相手がどう受け止めるのかに尽きる」とする。

 <友だちを呼ぶときは『さん』をつけます>。水戸市の私立水戸英宏小では校則にそう明記している。野淵光雄教頭(51)は「あだ名は身体的特徴や失敗行動など相手を 蔑視べっし したものが多い。呼び方だけでいじめを根絶できるわけではないが、抑止することにはつながる」とする。

 約160の公立小学校がある京都市でも、ある校長は「この10年で『さん付け』は半数近くにまで広がっている」と語る。

 一方、埼玉県内にある小学校の40歳代の男性教諭は「さん付けは時代の流れであり、それを各校が取り入れることは理解できる。ただし、あだ名まで禁止すると円滑なコミュニケーションがとれないのでは」と語る。長野県で小学校の校長経験がある60歳代の男性も「昔は子供たちが愛称で呼び合った。その効果か、クラスはにぎやかだった」と振り返る。

 日本サービスマナー協会認定マナー講師の吉岡由香さんは「呼び方一つで相手を不快にさせることもある。さん付けもあだ名も大切なのは相手への敬意。学校現場では、幼少期から相手を尊重することの大切さを教えてほしい」と話している。

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