コロナ禍は一段落し、ウクライナ戦争では野党は存在感を示せなかった。岸田文雄内閣はこれといった成果を出していないが、5月23日発表の朝日新聞調査では59%、6月5日発表の読売新聞調査では64%と記録的に高い支持率を叩(たた)き出している。盤石の数字だ。

 野党は全体的に低迷し、日本維新の会も昨年衆院選の勢いはない。しかし特に深刻なのは立憲民主党である。半年前始動した新体制は腰が据わらず、存在感は限りなく薄い。8日には内閣不信任決議案を提出したが話題にもなっていない。NHKによれば衆院選直後には支持率は8%強だった。それが5%にまで下がっている。一時は維新にも抜かれた。解党の噂(うわさ)すら囁(ささや)かれている。

 昨秋には政権交代を訴えていたのが嘘のようだが、筆者には当然の凋落(ちょうらく)に思える。立憲は衆院選の総括をできなかった。コロナ禍と格差拡大で苦しむ国民は多い。本気でその受け皿になるのなら、岩盤支持層が好む先進的政策ばかりを追うのではなく、多数派の生活者に寄り添った政党に生まれ変わるしかなかったはずだ。

 立憲は2017年に民進党の実質的解党によって生まれた左派政党である。2010年代半ばの「デモの時代」の高揚感を引き継いだまま衆院選に突入し、世論の変化を見誤って惨敗した。今は感染症と戦争の時代だ。国民に余裕はない。理想を貫けば国民が立ち上がり政権は転覆するという幻想から立憲支持者は卒業すべきである。最近のリベラルは「アップデート」という表現を好むが、本当にアップデートが必要なのは彼ら自身ではないだろうか。

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