
大阪で私をまっていた実験の担当者は、ピンクのトレーナを着た、
かわいらしい女性だった。
その研究室では、みんなそのおそろいのピンクのトレーナを着ていた。
そのトレーナにはイラストと一緒に英語で「私たちはミュータント(突然変異)」
という意味の言葉が描いてあった。
研究室のみんなでお金を出し合っておそろいのトレーナを作ったのだという話だった。
私は男性もそのトレーナを着なければいけないのですかと彼女に聞いてみた。
すると、それは本人の自由意志ですと彼女は答えた。
すぐわきの研究室の壁に張紙がしてあるのが見えた。
そこには「秘密の花園」とかいてあった。
彼女は私の視線に気が付いたらしくて、会社のサークルですと説明してくれた。
よくあるQCサークルのようなものらしかった。
そこの部署は、もともと女性の社員が多かったので、先輩がサークルの名前を
「秘密の花園」とつけたそうだった。
それ以来、その名前が代々受け継がれてきたという事だった。
ただし、いまはサークルは二つに分かれて、「本家秘密の花園」と、
「元祖秘密の花園」になっていますと彼女が付け加えた。
私は、それを聞いて両手で頭を抱え込んでしまった。
彼女は私の仕草を見て、頭を抱えないことと言ってかわいらしく微笑んだ。
東京に帰ってから私は、自分の作った画像認識システムに、
彼女の名前「MIKA」をつけることにした。
そうすればもう一度彼女に会える機会があるような気がした。
そしてその時以来、私は作るソフトに必ず彼女の名前をつけるようになった。
https://www.asahi-net.or.jp/~bg8j-immr/oitachi.htm