「次に内戦が起きる国」を予測する─カリフォルニア大教授が指摘する「意外な国」とは



1つ目の要素は「アノクラシー(anocracy)」と呼ばれる変数です。バージニア州を拠点とする非営利の研究機関「センター・フォー・システミック・ピース」は毎年、世界各国の政府の質に関連するあらゆる事柄を測定しており、その一つがアノクラシーです。

アノクラシーとは、その国がどれくらい独裁的(autocratic)であるか、民主的(democratic)であるかを測る指標で、スケールは「マイナス10」から「プラス10」までの幅があります。

マイナス10は最も独裁的で、北朝鮮やサウジアラビア、バーレーンを思い浮かべてみてください。プラス10は最も民主的で、当然ながら皆が望む社会です。デンマークやスイス、カナダがこれに当てはまるでしょう。

この指標がプラス5からマイナス5の中間領域にある国は、両方の特性を兼ね備えていると言えます。プラス5であれば、民主的な特性が強いけれど、独裁的な要素も多少はある。一方、マイナス5であれば独裁的な特性が強く、民主的な要素は少ない。

学者たちは、このアノクラシーという変数が内戦のリスクを実際に予測するものであることを突き止めました。どういうことかというと、完全な民主主義国家では内戦がほとんど起きない。そして完全な独裁国家でも起きない。社会の不安定化や暴力行為はいずれも、この変数が中間領域にある国で起きているのです。

そうした国が不安定である理由はいろいろですが、大きな理由の1つは、政府が弱体化しやすいことにあります。

たとえば、政府が民主化への移行を図っている国では、独裁的な特性が薄れる。軍が支配を断念すると、反体制的な活動は組織しやすくなる。一方、民主主義が後退している国では、政府に正当性が感じられず、人々が政府に不満を抱き、内戦や権力闘争が起きる。

このように、中間領域の国々にはそれぞれに弱い部分があります。いずれにせよ、この変数は高い確率で内戦を予測できることが判明しました。


2つ目の要素は、この中間領域に位置する「部分的民主主義国家」の人々が、イデオロギーではなく、ほぼアイデンティティーのみに基づいて政治集団化するようになっているかどうかという点です。

つまり、共産主義か否か、リベラル派か保守派かといったイデオロギーではなく、民族や宗教、人種などに基づいて政治集団化するようになっていると、内戦に陥りやすい。その典型的な例が、旧ユーゴスラビアで起きたことですね。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2b894b9b099d47a766403c3fab8832eb54797e19