ことの発端はマレーシアで開催される盆踊り大会に「仏教に根差す行事にイスラム教徒は参加すべきではない」とイスラム政党が不参加を呼びかけたことだった。

確かに盆踊りは死者を弔う意味を込めてお盆に行われるものではあるが、日本人の間でも盆踊りを仏教関連の行事と認識している人は少ない。そもそも盆踊りの起源には仏教行事、歌垣の遺風、原始信仰の儀式など諸説あり、確定もしていない。地方の行事、風習、風俗として伝承されているが、今では若者向けのイベントとして行われるケースも多い。

海外では、現地の日本人会や商工会議所、大使館などの主催や協賛で開催されるケースが多く、日系人社会が定着している米ハワイ、カリフォルニア、南米のブラジルなどでは地域の行事と化している。

東南アジアではタイ、マレーシア、インドネシアで毎年盆踊り大会が挙行されているが、マレーシアの盆踊りは約40年の歴史があり、日本を除くと世界最大規模の参加者で賑わう恒例行事となっている。

本格的なコロナ渦前の2019年7月、マレーシアの首都クアラルンプール近郊にあるシャー・アラム競技場で行われた盆踊り大会は約3万5000人を集め、民族、宗教、性別に関係なく誰もが参加できる大会として開催された。

クアラルンプール観光局が無料シャトルバス、医療チームを駆り出し、交通警察も協力するなど、マレーシア側によるバックアップも充実した地域挙げての盆踊り大会だったという。

ところが今年6月6日、イスラム政党である「マレーシア・イスラム党(PAS)」幹部で首相府相(宗教担当)を務めるイドリス・アハマド氏が「仏教に根差す盆踊り大会にイスラム教徒が参加するべきではない」と主張したのだ。これに対しては賛否両論が広まり激しい論議となっている。

盆踊り大会はコロナ渦で2年間開催が中止され、今年は久々の開催となる。7月16日にクアラルンプール近郊のセランゴール州シャー・アラムで、同月30日には北部のペナンで開催が予定されている。

イドリス・アハマド氏による盆踊り大会へのイスラム教徒不参加勧告は、イスラム教組織などからは一定の支持を受けている。

盆踊り開催場所の一つであるペナン州のムフティ(イスラム教指導者)であるワン・サリム師は、「イスラムでは踊ったり霊を崇拝したりすることで先祖を思い出すことは奨励されていない」「イスラムの教義に反するムシュクリ(多神教)に繋がる恐れがある。我々は信仰の純粋性を維持するべきである」とイスラム教の立場から盆踊り参加への反対を表明している。

ペルリス州のムフティ、モハマッド・アヌリ・ザイヌル師は折衷案として、「盆踊り大会」という名称を「日本文化フェスティバル」「日本文化祭」などに変更する案を出している。

しかしこの名称変更案も「名称を変えろというなら他の外国のイベントも全て変えろということか、非常識だ」「名称を変更するのは外国文化に失礼だ」「日本への侮辱だ」などと一斉に反発を招く結果となってしまった。

「盆踊り大会」は仏教行事…? マレーシアで「イスラム教徒不参加勧告」が炎上中
https://news.yahoo.co.jp/articles/86515657143a3899967740068de047c8ea4d3b06