ところで、同じ多様性について話をしていても、日本とドイツ(ヨーロッパ)では解釈がずいぶんと違うなと感じることがあります。

コロナ禍において、日本では「女性の貧困」が問題になっています。その背景には、働く女性の多くが非正規雇用であり、安定した働き方ではないことが深く関係しています。

そういったことを考えると、私自身は、女性の生き方として専業主婦を選ぶのはリスクがあるのではないかと考えています。ところが、それを口にすると「生き方は人それぞれなのだから、専業主婦も多様な生き方の一つ」と反論されることがあります。

ヨーロッパでいう「多様性を認めること」は、LGBTQへの理解を深めたり、これまで女性が就いてこなかった職業に女性が就きやすくなったり、今までしてこなかったものを積極的に進めることを指します。

これに対して日本には「昔ながらのシステムのもと、古風な生き方をする女性も多様性の一部」という考え方があります。これが日本とヨーロッパの圧倒的な違いだと私は感じます。

日本では多様性は大事としながらも、「力仕事が男性にしかできないように、産むことは女性にしかできない」「女性は女らしさを、男性は男らしさを大切にするべき」という旨の発言をよく聞きます。

でも、従来の古風な生き方を多様な生き方の一つと見なしてしまうと、結局は、多くの人が保守的な生き方を守ることに固執してしまい、多様性のある社会への変化を妨げることになるのではないでしょうか。

https://president.jp/articles/-/59164?page=4