最低賃金の改定協議が難航している。労使の代表らが参加する中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)小委員会の議論は最終盤を迎えたものの、引き上げ幅をめぐって溝が埋まらず、次回の開催日程が決まらない。政治主導で進められた昨年、異例の採決の末に過去最大の引き上げ幅で決着し、労使双方にわだかまりを残したことが響いている。

 ロシアのウクライナ侵攻や急激な円安の影響による物価高騰が景気に影を落としており、今年の協議は開始直後から引き上げが必要だとの認識を労使が共有。25日の会合で決着するとの見方も広がっていたが、持ち越された。物価高を踏まえた引き上げを求める労働側と、仕入れ価格の上昇を納入価格へ転嫁し切れずに収益が圧迫されている経営側の主張が平行線をたどった。

 昨年は、首相官邸の意向で「大幅引き上げありき」で議論が進んだ。労使の意見は隔たりが大きく、採決に持ち込まれ、「政府の意向だとしても、過去最高のアップ額とするのは中小企業に説明できるものではない」などとして経営側委員2人が反対した。政治介入を警戒する労働側も「採決という異例の事態を繰り返してはならない」(連合の芳野友子会長)と穏当な決着を訴える。

 こうした「遺恨」が今年の協議に影響した。労使の間に立って行司役として議論に参加する公益委員は前回会合で、「どういう考え方で金額を導き出すか、再度検討するのに時間が必要だ」ととりなした。これを労使が受け入れ、引き上げ額の算定根拠も含めて丁寧に議論を尽くす方針を確認。決着に向けて水面下で調整を急いでいる。

https://sp.m.jiji.com/article/show/2790307