河瀬直美監督の地元、国際映画祭も開かれるのに「映画館ゼロ」

映画館の少ない奈良県からまた一つ、映画館が姿を消す。同県河合町の「イオンシネマ西大和」が21日に閉じると、残りは3館だ。

 日本映画製作者連盟(映連)の2021年末の統計によると奈良県内のスクリーン数は計34で、関西6府県で和歌山県に次いで少ない。ミニシアターもないが、そんな地域は全国で奈良を含めて3県しかない。

 県庁所在地にないのも、奈良市の特徴だ。10年に「シネマデプト友楽」が閉館して以来、ゼロになった。こうした自治体は全国でほかに山口市しかない。

 「えっ、『あそこ』に映画館あるやん」と思った人はなかなかの奈良通。だが、「あそこ」の映画館は奈良市に立地しながら、公的には「ない」というややこしいことになっている。

 その場所とは「イオンシネマ高の原」。同市と京都府の府県境に立つモールの4階にある。シネマの直下の土地は奈良市だが「モールの登記に合わせた」(イオン広報)ため、住所は「京都府木津川市」なのだ。記者も実際にシネマ内の売店で買い物をしたところ、レシートには京都の住所が記載されていた。

 「映画館空白地」の奈良市では、市出身で奈良を拠点に活動する河瀬直美監督らが力を入れる「なら国際映画祭」が10年から開かれ、移動型の上映会も行われている。県内に残る三つのシネコンは最新設備が相当充実したところも。奈良の映画熱が低いわけでは決してない、はずだ。

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