「9・29日中オンライン首脳会談」――少し前まで誰も予想していなかった「イベント」が、にわかに浮上してきた。

 9月29日は、日中国交正常化50周年記念日である。これを祝して、岸田文雄首相と習近平(しゅう・きんぺい)国家主席が、それぞれ東京と北京から、オンラインで首脳会談を開こうという企画が持ち上がっているようである。

 当初は岸田首相が、安倍晋三元首相の国葬を9月27日に設定したことから、その2日後に大きな日中間のイベントはないと目されていた。国葬には世界中からVIPが来日するので、首相や外相が2日後に北京に飛ぶというのは不可能だからだ。

 また中国側は、私の得た情報では、王岐山(おう・きざん)国家副主席を、安倍元首相の国葬に派遣する予定でいる。そのため、国葬の2日後に習近平主席や王毅(おう・き)国務委員兼外相が来日するということは考えにくい。というより、第20回中国共産党大会が間近に迫っていて、中国側にもそのような余裕はない。そのため、王岐山副主席の訪日をもって、50周年のイベントにしようとしているかに見えた。

「総書記留任」の条件は経済のV字回復



 ところが今年は、逆にいい意味で影響を与えた可能性がある。それは中国が、「総書記交代」ではなく「総書記留任」の年に当たったからだ。

 8月1日から15日まで、「中南海」(北京の最高幹部の職住地)の主な面々の消息が途絶えた。秋に控えた第20回中国共産党大会で決議する人事と方針について、習近平総書記ら現役執行部と、すでに引退した長老(元幹部)とが、意見の擦り合わせを行ったものと思われる。

 すべてはブラックボックスなので結果は不明だが、8月16日以降の中国幹部たちの動向や発言、それに『人民日報』、新華社、CCTV(中国中央広播電視総台)など官製メディアの報道から類推するに、大枠次のようなことではないか。

 すなわち、習近平総書記の留任(2期10年を終えて通例通り引退せず、異例の3期目を続けること)は承認された。ただし条件がついて、それは中国経済を「V字回復」させることだ。

林・王毅の外相会談キャンセルからの急転回

続く
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