子どもたちにとって、夏の楽しみの1つである「虫とり」。
カブトムシやクワガタが憧れの的となる一方で、野外では危険な虫と遭遇する可能性もある。
そんな中、夏になると活発になり、触れると皮膚炎を起こす「やけど虫」が注目を集めている。
やけど虫の別名で呼ばれるこの虫は「アオバアリガタハネカクシ」。
5~7mmほどの大きさで日本全域に生息し、湿った草地や畑などの緑地に潜んでいる。
また、光に集まる習性を持ち、5~10月の蒸し暑い時期によく見られるという。
そもそも、なぜ「やけど虫」と呼ばれているのだろうか。九州大学総合研究博物館の丸山宗利准教授に話を聞いた。
「アオバアリガタハネカクシは『ペデリン』という毒を持っている。
人の体に止まったときに誤って潰してしまうと、ペデリンが皮膚に付き、やけどのようなひどい皮膚炎になる。
水膨れができて、お湯をかけてしまったようなやけどができるから“やけど虫”と呼ばれる」
虫が体を刺すのではなく、潰してしまった際の体液が皮膚に触れることで、やけど跡のような皮膚炎を引き起こす。
潰した後すぐに痛みを感じるわけではなく、その1時間後に炎症が始まる。丸山准教授は、さらに危険なのは「皮膚炎だけではない」と話す。
「本当にすごく強い毒なので、皮膚の柔らかいところに付いたらやけどになる。
同じように粘膜が特に弱くて、目に入ると本当に危ない。失明する可能性がある。(手で潰した後に目をこすると)非常に危ない」
緑地さえあれば郊外だけでなく、東京23区などの街中でも生息できるアオバアリガタハネカクシ。
その数は年々減っていて、被害数も前ほどではないものの「活発になる夏は対策や警戒が必要だ」と丸山准教授は注意を促す。
「アウトドアのときはしっかり長袖・長ズボンを履いて、体の露出部分を減らすこと。
特にバーベキューなどを夜にやると、光に集まってきた虫が体に付いてしまう。心配であれば、そういう格好をするのが大事だと思う」
「(もし体液に触れてしまった場合は)気づいたらすぐに洗い流すことが大事。皮膚炎が始まってもどんどん皮膚にしみ込んでいくので、よく洗うこと。
そして、強いステロイドによって腫れを抑えることが大事なので、できるだけ早く病院に行くこと」