男性の「中咽頭がん」が増加中 データ蓄積による予防に期待

 子宮頸がん発症の原因とされるHPV(ヒトパピローマウイルス)は中咽頭がんの発症にも関わっている。現在、世界中の男性を中心に急増しており、喫煙・飲酒などが原因の通常の中咽頭がんと比べ、発症割合が多い。治療は手術が第一選択だが、放射線と抗がん剤の併用治療も効果が高い。2週間以上続く喉の痛みや首のリンパの腫れは耳鼻科専門医の検査が必要だ。

 HPVは200種類以上の型があり、主に性交渉(オーラルセックスも含む)で感染する。大半は感染しても免疫機能が働き排除されるが、中にはウイルスが細胞に潜伏し、長期間経過後に、がんを発症することもある。このHPVが原因のがんとしては子宮頸がんが有名だが、男性も中咽頭がんを発症する。

 これは世界的な傾向で、女性はHPVワクチン接種により、子宮頸がんが年々減少しているのに、男性の中咽頭がんは確実に増えているのだ。

 順天堂大学医学部附属順天堂医院耳鼻咽喉・頭頸科の松本文彦教授に話を聞いた。

「外来を訪れる中咽頭がんの患者の約60%がHPVによるものです。初期症状は従来の中咽頭がんと同じで、主に口蓋扁桃(扁桃腺)の腫れや喉の痛み。ただHPVが原因の中咽頭がんは転移して首のリンパ節が腫れることもあり、それで発見されるケースがあります。またHPVは10~20年の潜伏期間があるため、若い頃に感染すると40~50歳で発症し、60歳以上でも多く罹患しています」

 喉は上咽頭、中咽頭、下咽頭の3つに分けられるが、がんが中咽頭に発生するのは組織の構造に理由がある。リンパの一種の扁桃組織は口蓋扁桃と舌の付け根にあり、山と谷を繰り返すような構造になっているので、ウイルスに感染しやすい。さらに感染後は深い谷の底部分に潜伏し、長い時間棲み付く。

 HPVが、がんを発症させる仕組みは、がん抑制遺伝子のp53を不活化させる働きがあるからだと考えられている。他にも喫煙や飲酒などが原因の従来の中咽頭がんでは30~40%で下咽頭がんや食道がんなどを発症するが、HPVはほぼ中咽頭だけだ。
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