アニメ『チェンソーマン』制作者インタビュー「現場は、まるで優勝を取りに行く強豪校」
https://www.mensnonno.jp/lifestyle/culture/255627/
──アニメ制作においてこだわっている点を教えてください。

中山 原作の雰囲気を壊さないように、リスペクトを持って制作に当たることを前提に、“映画好き”という藤本タツキ先生との共通点を足がかりにしながら、実写的な画面をつくっていきたいと考えています。デフォルメを減らし、安易に“アニメっぽさ”にいかない。映像としてどう見せたいかに重きを置いています。

──『チェンソーマン』らしいアクションの描き方はありますか?

中山 戦闘シーンに関しては、アクションディレクターとして吉原達矢さんが監修してくださっていますし、僕自身アクション作画を手がけてきているので、自然にこだわりが出ちゃう領域ですね。

瀬下 アクションっていうと、戦っている場面や派手なシーンをイメージしますが、走ったり、振り向いたり、髪がなびいたり、そういうものを含めてアクションだと思うんです。『チェンソーマン』は、そこに対する監督のビジョンが濃厚に出ている作品。そういう意味で話すと、どうですか?(笑)

この世界でただ生きているデンジたちに描き手の意図を与えず、写実的に表現する(中山)
中山 まさにそのとおりです(笑)。考えていることは、話し方や声のトーンも含めて、「そのとき自分がのぞき見されていたら、どう動いてる?」ということ。デンジたちはこの世界でただ生きているだけで、描き手がこう見せたいという意図を強く反映してしまうと、“写実”にフィルターが入りすぎる。
そこに各クリエイターの特色が出るので消し切る必要もないけど、料理でいううま味と雑味のおいしいところだけをなるべく漉(こ)した状態で使いたいという感覚です。

クリエイター同士が意見をぶつけ、高め合う現場。まるで優勝をとりにいく強豪校(瀬下)
瀬下 クリエイターも、とにかく精度へのこだわりが強い人が集まっていて、かなり意見のぶつかり合いが多い。それは本当にいいこと。例えるなら、優勝をめざす意志が全員固まっている強豪校。

中山 その中に、ホームランを打ちたい人もいれば、盗塁したい人もいて、その魅力を適所で生かすことですごい力が生まれるんです。

──毎話、本編に合わせて変わるエンディング。すごい仕掛けです。

中山 最初は、瀬下さんと「この回の特殊エンディングはつくりたいですよね」と何げなく話していて。模索していくうちに、いつのまにか全話別エンディングに(笑)。

瀬下 ディレクションによって話数ごとに色が違うので、展開にひもづいたエンディングは理想です。

中山 なので、楽曲を発注する際に「この話数はこういう余韻が欲しいので、こういう曲調で、こういうテイストで」とご依頼して。各アーティストさんがとても協力的に制作してくださって、すばらしい余韻を演出できています。

瀬下 つくりとして珍しく、とても面白い見どころになっています。