結局、財閥が好き
https://www.sankei.com/article/20230101-CQ53UHHWPBJJVA2XROI2DYWVRM/

韓国に赴任して7年目にして初めて韓国ドラマを初回から最終回まで放送日に合わせて見る経験をした。話題のドラマがあっても忙しさにかまけて見逃すことが多かったが、最近大ヒットしたドラマ「財閥家の末息子」にはテレビの前に座るのを優先したくなるほどハマった。

財閥の裏仕事をさせられた末、瀕死(ひんし)となった主人公が財閥創業者の孫として1980年代に「生まれ変わる」物語で、未来を知る力を生かして財閥一家と後継争いを演じる。87年の民主化時の大統領選や97年のアジア通貨危機、2002年の日韓ワールドカップ(W杯)など歴史上の出来事が組み込まれ、主人公とタイムトラベルが味わえる趣向となっている。

外国人には当時の流行や若者の嗜好(しこう)が分かり勉強になるが、普段ドラマを見ない韓国の中年男性も青春時代を懐かしんで見たことが最終回で約27%という高視聴率につながったという。

現代韓国の経済・社会・政治史の重大な場面ごとに財閥が与えてきた影響の大きさも改めて実感した。財閥はトップが度々逮捕されるなど、韓国社会で憎まれ役となってきたが、「やっぱり憧れなんです」と周囲の韓国人は言う。財閥は現代韓国人にとって愛憎半ばする存在だからこそ生まれたヒットドラマともいえそうだ。(桜井紀雄)