市のズレた「男女共同参画」…行政動かした大学生の疑問(西日本新聞)
https://news.yahoo.co.jp/articles/44af418e44c6dbbbfd4fd774cf1e341786a49263

男女共同参画基本計画なのに「内助」「器量良し」? 一人の大学生の率直な疑問が行政を動かした。大分県臼杵市が、地元に伝わる民話の主人公、吉四六(きっちょむ)さんの妻「おへまさん」を市民の理想像に掲げて策定した基本計画。そこには、古い価値観の再生やジェンダー不平等につながりかねない表現が並んでいた。市は大学生からの指摘を受け、不適切表現を一部認め、修正、削除する方針を決めた。

基本計画策定は、男女共同参画社会基本法が自治体に促しており、市は2017年3月に26年度までの現行計画を策定した。

市は「基本的な考え方」の章で、総合目標を「臼杵女性(おへまさんたち)の知恵と世話焼きが光る元気充電のまち」と設定。おへまさんに関しては「美人ではないが安心感を与える容姿」などと表現し、キーワードとして「内助」「我慢強い」「器量良し」などを列挙した。市民の理想像は男女問わず「おへまさん」とも記した。

市によると、基本計画案は商工会や自治会、婦人会などの男女15人でつくる委員会で議論。おへまさんのアイデアも委員会で出たという。メンバーは50~60代が中心で、最年少は30代後半。半数超の9人は女性だった。市は「委員会では『内助』などをいい意味に捉えていた」と説明する。

同市出身の大学生、伊藤沙綾さん(21)は、実家に届いた男女共同参画に関する市のアンケートをきっかけに、基本計画の内容を把握。ショックを受け、危機感から意見書をつづり、21年3月、市に郵送した。

意見書では、「内助」は女性が男性の補助的な役割を担う性別役割分業的な考え方であること、「器量良し」は容姿について述べているなら明らかに問題などと指摘。「男は仕事、女は家庭」に同感しない市民の割合を27年までに50%にするとの目標に対しても「低すぎる」と申し入れた。

市の反応は鈍かったが、伊藤さんは市議にも相談し、市の担当者と面会。昨年9月の市議会一般質問でも取り上げられた。市はようやく動き、「内助」や「器量良し」「安心感を与える容姿」などの文言の削除を決定。ただ、総合目標や理想像をおへまさんとすることは変えないという。

伊藤さんは「少しでもいい方向に動いてよかった」とする一方で、「そもそも行政が市民の理想像を掲げること自体に違和感を覚える」と話す。

市は22年度内に修正する方針だが、作製した冊子300冊のうち、約100冊は既に市内の企業などに配布済み。修正は手元の約200冊とホームページ上でのみ行う。市は「おへまさんによって親しみやすい計画ができ、企業などの反応もよかった。適切でない表現があったのはまずかったが、全面的な作り直しは次期計画で行いたい」としている。

(丹村智子)

新しい計画作りに取り組むべきだ

地方自治体の意識調査や政策立案に詳しい九州産業大の山下永子教授の話 計画策定に関与したメンバーは地元の50代以上が軸で、類似した経験を積んだ女性が集められ、経験を尊重し合う方向で議論が行われたのではないか。そこに男性メインの事務局も便乗してしまったと推察する。さらに有識者や若い人を加えるべきだった。修正も一部ではなく、新しい計画作りに取り組むべきだ。