子牛の価格暴落、1頭たったの1100円…「三重苦」に悩む酪農家

熊本空港に隣接する熊本県家畜市場に、大人の腰までほどの大きさの子牛がひしめいていた。

セリ人の声が市場に響く。

「ホルス(タイン)の雄、1千円からです。1千円……」

「ほか、いないですか。1千円」

値段を引きあげる声は聞こえないまま、ひもで引かれてセリ場に出てきた子牛の値段が、10秒ほどで決まっていく。

酪農家たちは新型コロナ対策のためセリ場には入らず、出番をまつ牛たちの頭上にあるモニターでその様子を見守っていた。

「厳しかですよ」

熊本市で酪農を営む米野博明さん(72)は、ため息をついた。

子牛の価格が暴落している。

熊本県畜産農業協同組合によると、取材した12月のある日のセリでの値段は、乳用牛・ホルスタインの子牛の雄が1頭あたり平均4万5千円ほど。半年前は平均価格が10万円ほどだったから、半分ほどだ。

生育状況などによって値段も変わり、最低価格は税込みで1100円。体重70キロ台まで育った子牛が、わずかな価格で売られていった。

F1と呼ばれる、乳用牛と黒毛和牛の交雑種も、やはり下がっている。

酪農家にもよるが、子牛の販売は収入の2割ほどを占める貴重な収入源だった。

https://www.asahi.com/sp/articles/ASR1F6K8PQDTTLVB005.html?iref=sp_new_news_list_n