銀座の有名インド料理店でカニのカレーを頼んだら、カニカマが出てきた」

 記者のもとに困惑した友人から連絡があった。

【画像】カレーに入っていた4つの長方形「これはカニカマでは?」

「見た目からして明らかにカニカマだから、変だなと思って店員さんに聞いてみたんだよ。そしたら、『カニです』って自信満々に言うわけ。自分の舌に自信があるわけじゃないから、その場は引き下がったけど、見た目といい味といい、絶対にカニカマだったと思うんだよね」https://news.yahoo.co.jp/articles/75f97ef8fdfcd159f79f6598c293e34bf0606520 
友人が訪れたインド料理店の名前は、「バンゲラズキッチン」。ミシュランガイド東京でビブグルマンを獲得している人気店だ。南インドの港町・マンガロール地域の料理に特化しており、ホームページには「日本では珍しい“マンガロール料理店”として、食通達の間で瞬く間に話題沸騰中!」との記載がある。確かに、グルメサイト「食べログ」やGoogleの口コミでも評価はすこぶる高い。


のため、本物のカニが200g入っているのか店員に聞いてみたが、「間違いない」とのことだった。ほどなくして、注文したカニのカレーが運ばれてきた。スパイスの香りや見た目は、想像していたインドカレーと変わりない。スプーンでカレーをすくってみると、中から約15cm×約3cmの赤い物体がごろごろと現れた。その物体は計4本あり、いずれも同じような長方形に近い形をしている。

 これはカニカマではないか――。記者はカニの、ましてやカニカマの専門家ではないが、直感が目の前の4つの長方形をカニカマだと告げていた。しかし、世の中にはまだ自分の知らない姿かたちをしたカニもいるのかもしれない。独り合点の前に、店長だという男性に声をかけた。

――文春オンラインです。これはカニではなく、カニカマだと思うのですが……。

「はい、カニカマです」
「はい、カニカマです」

 店長は考えるそぶりもなく即答し、何をわかりきったことをという顔さえしてみせた。

――メニューにはカニと記載があり、注文の際にも本物であるか確認しました。カニとカニカマは別物ですが、その認識はありますか?

「はい。インドでもカニカマは食べます。カニカマとカレーの味が合うし、殻付きのカニだと食べづらいというお客様からの声があり、カニカマを使っています」

 店長によると、一時期は本物のカニを使っていたこともあったそうだが、カレーにすると殻付きのカニは食べづらいため、しばらく前からカニカマを使っているという。

――カニカマを使って1皿3000円は高いと思うのですが、価格についてはどう思いますか?

 店長はカレーの原材料をインドから輸入しているため、カレー自体の単価が高いことを説明した。そして、食品の値上げや昨今の世界的なエネルギー高騰などの影響を受けていることについても触れた。

 店長の理路整然とした説明と堂々とした態度に、あやうく納得しそうになる。しかし、問題は「カニ」を謳っておきながら「カニカマ」を使っているという、“偽装表示”だ。そして店側はカニカマを使っているとあっさり認めた。

「これはカニカマでは?」「いいえ本当のカニです」という押し問答になることを想定していただけに、狐につままれたような気持ちになる。つままれついでに気になってきたのは、バンゲラズキッチンのいう「カニカマ」が果たして本物のカニカマなのかということだ。