https://jp.wsj.com/articles/the-climate-crusaders-are-coming-for-electric-cars-too-b1af1f18
すべてのガソリン車を電気自動車(EV)に置き換えるだけでは、世界の気温が過度に上昇するのを防ぐのに十分ではない。だから人々は自動車を手放さなければならない。これは、カリフォルニア大学デービス校と「気候とコミュニティー・プロジェクト」と呼ばれる「学者と政策専門家のネットワーク」がまとめた新しい報告書の驚くべき結論だ。

 この報告書は、温室効果ガス排出量を正味ゼロにするという左派勢力が推進する目標達成のために、個人や環境、経済が膨大な犠牲を強いられることを率直に指摘している。進歩派が隠しているきまりの悪い事実は、誰もが現在よりはるかに少ないものでやりくりしなければならないというものだ。自動車の数を減らし、もっと小さな家と庭を選び、生活水準を著しく下げる必要がある。

 問題その1は、EV用電池にはリチウム・コバルト・ニッケルなどの鉱物が大量に必要であり、これらは化石燃料と同様に地中から採掘しなければならないという点だ。報告書は「今日のEV需要水準から2050年を予測すると、米国のEV市場に必要なリチウムだけで、全世界で現在生産されている量の3倍になるだろう」と指摘している。

 こうした鉱物は化石燃料とは異なり、ほとんどの場合、野生動物がたくさん生息し、先住民族が居住しがちな未開発地域で見つかる。報告書は「大規模な採掘は社会的・環境的被害を伴い、多くの場合、影響を受けるコミュニティーの同意なしに、取り返しがつかないほど景観を損なってしまう」と指摘する。採掘は安全に行うことが可能だが、貧困国ではそうなっていないことがよくある。

 問題その2は、鉱物の採掘には大量のエネルギーと水が必要であり、その精製にはさらに多くのエネルギーと水が必要になるという点だ。報告書によると、鉱業は世界の温室効果ガス排出量の4~7%を占める。自動車メーカーは、ドライバーたちが好むという理由で電動のピックアップトラックやスポーツ用多目的車(SUV)の製造を優先しているが、それらにははるかに大きなバッテリーとより多くの鉱物が必要だ。

 EV増産のために鉱物の採掘を増やすと、二酸化炭素(CO2)の排出量が増える。また大気からCO2を吸収している熱帯雨林や未開墾地も破壊される、と報告書は指摘する。