好物は鹿せんべい、だけじゃない 奈良の子ジカに「庭の枝葉寄付を」

奈良の鹿の好物といえば鹿せんべいやドングリが知られるが、実は広葉樹の葉っぱや小枝も大好き。病気やケガをした鹿を保護している一般財団法人・奈良の鹿愛護会(奈良市春日野町)は「弱った鹿ほど新鮮な枝葉を好む。庭木の剪定(せんてい)などで出た、生の枝葉をぜひ寄付してほしい」と呼びかけている。

同会の「鹿苑(ろくえん)」には現在、病気やケガをした約300頭の鹿が保護されている。エサの多くはアメリカなどから輸入した牧草や寄付されたドングリで、タケやササなども与えているという。

同会の獣医師、丸子理恵さん(54)は昨年春ごろ、自宅のカシの木を剪定していて、地面に落ちた多くの枝葉を見て「鹿苑の鹿にあげてみよう」と思い立った。それまでは捨てていたという。鹿たちはすぐに食べてしまった。牧草の購入代はじわじわと高騰しており、剪定後の枝葉を有効利用すればエサ代も少しは浮く。

昨年4月、丸子さんは同会のブログに「剪定した庭木を燃やしてしまわず、鹿が食べれば、二酸化炭素排出を減らすことにもつながります」と投稿。県内外の人たちが枝葉を持ち込んでくれるようになった。

今年1月には、大阪の人が45リットル袋10個分ほどのカシの枝葉を車で運んできてくれた。鹿苑の鹿たちは夢中になって食べ、すぐになくなった。同月のブログにその様子の写真をアップして、「枝葉の持ち込み大歓迎」と再び寄付を募った。

今月初め、交通事故に遭い、右の後ろ脚を骨折した子ジカが運び込まれた。昨秋に生まれたらしく、体重は12キロ。床ずれも出始め、一進一退を繰り返しながら持ちこたえている状態という。丸子さんは「食欲があまりない。食べないとどんどんやせていく」と心配する。

乾燥した牧草はあまり口にしないが、みずみずしい草や葉っぱは比較的食べてくれる。全治まで3カ月ほどかかる見通しだ。「少量でもいいので、この子ジカに寄付してほしい」と丸子さん。農薬などを使っていないカシ、タケ、ササ、クスノキ、シイなどの葉、ボールペンほどの太さまでの小枝を求めている。

https://www.asahi.com/articles/ASR2K6WBQR2KPOMB002.html

交通事故で脚を骨折して、奈良の鹿愛護会に運ばれてきた子ジカ。牧草(後方)よりも、みずみずしい草や葉を食べていた=2023年2月17日、奈良市春日野町、伊藤誠撮影
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