https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230305/k10013998981000.html

中国 全人代が開会 ことしの経済成長率の目標 5%前後と設定

中国で重要政策を決める全人代=全国人民代表大会が始まり、中国政府はことしの経済成長率の目標を5%前後と設定し「ゼロコロナ」政策の影響などで停滞した経済の立て直しを進める方針を示しました。
ただ、地方政府の財政難などの課題も多く、難しいかじ取りが予想されます。

北京の人民大会堂で5日に開会した中国の全人代で、政府活動報告を行った李克強首相は「重大リスクを防止・解消し景気の全般的な好転を促す」と述べ、内需の拡大や財政支出による下支えなどで経済の立て直しを進める方針を示しました。

そして、ことしの経済成長率の目標について5%前後とすることを表明しました。

これは、去年の目標である5.5%前後から引き下げた形で、IMF=国際通貨基金のことしの成長率の見通しである5.2%より低い水準です。

去年は「ゼロコロナ」政策の影響などで経済が停滞し、目標を大きく下回ったこともあり、今回、比較的達成しやすい目標を設定したものとみられます。

政府活動報告では「多くの中小企業が困難を抱えて雇用対策が非常に困難で、一部の地方政府の財政難がさらに深刻になっている」として、さまざまな課題に直面しているという危機感もにじませています。

今回の全人代では、これまで経済政策を担ってきた閣僚らが多く退任し、新たな首相らが選出されて習近平指導部3期目の政府の体制が発足しますが地方政府の財政難などの課題も多く、難しいかじ取りが予想されます。
新型コロナ対策「決定的な勝利を収めた」
李克強首相は、新型コロナウイルス対策について「発生からの3年余り、習近平同志を核心とする党中央は全力で感染者の治療に当たり、人々の命と健康を守り、状況に応じて対策を調整し、決定的な勝利を収めた」と成果を誇示しました。

そのうえで、今後の対応については「より科学的に、正確に効率的な感染対策に取り組み、ワクチンや新薬の開発を進め人々の命と健康をしっかりと守る」としています。

一方、厳しい行動制限を伴う「ゼロコロナ」政策が緩和された去年12月以降に各地で感染が急拡大したことや死者が増加したことについては言及しませんでした。
台湾「『独立』に断固反対 平和統一のプロセスを推し進める」
一方、李克強首相は、台湾について「『独立』に断固反対し、祖国の平和統一のプロセスを推し進める」と述べ、統一を目指す姿勢を改めて強調しました。

そのうえで「経済や文化の交流と協力を促進し、台湾の同胞の福祉増進のための制度や政策を充実させる」と述べました。

また、香港については「社会秩序の回復から繁栄の新たな段階に入るよう推し進めた」とこれまでの香港政策を振り返りました。

そのうえで「『一国二制度』のもとで高度な自治という方針を貫徹する。経済の発展と人々の生活の改善を支持し、長期的な繁栄と安定を維持する」としています。
経済・財政政策の重点項目は
5日の政府活動報告では、経済の現状について「多くの中小企業が困難を抱えて雇用対策が非常に困難で、一部の地方政府の財政難がさらに深刻になっている。不動産市場が数多くのリスクを抱えて一部の中小金融機関のリスクが顕在化している」として景気の停滞を受けた課題も指摘しました。

そのうえで、ことしの政策運営の方針として次の8つの重点項目を掲げました。

1 内需の拡大
2 製造業の供給網強化のための技術開発
3 国有企業の改革と民間企業の成長支援
4 外国からの投資の誘致
5 経済・金融分野のリスクの防止
6 食糧の生産安定や農村振興
7 環境対策の推進
8 社会保障の拡充です。

このうち、2の「製造業の供給網強化のための技術開発」では、アメリカとの対立が続く中で供給網を強化することや、これまで締めつけを強めてきたIT企業の成長を促すことが盛り込まれ、景気回復につなげる姿勢を示したものとみられます。

このほか、4の「外国からの投資の誘致」では対外開放を進める姿勢を改めてアピールすることで「ゼロコロナ」政策の影響などで停滞していたと指摘される、外国からの投資を呼び込んで経済成長につなげたい思惑があるとみられます。

一方、5の「経済や金融のリスク」について、経営危機に陥っている不動産企業の問題に対応しつつ業界を安定させることや、増加する地方政府の債務のリスクを防止すると強調しました