千葉大飛び入学、研究者、そしてトレーラー運転手 研究者の現実とは
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 物理の才能を見いだされ高校2年で千葉大学工学部に飛び入学し、今はトレーラー運転手として働く佐藤和俊さん。なぜ研究者の道をいったん諦めることになったのか。政府が科学技術立国の実現を掲げるなか、学ぶ側や研究者にどんな現実が立ちはだかっているのか聞きました。

高校は物理、化学、数学だけ勉強
 ――物理に興味を持ったきっかけは何ですか。

 「中学3年生の初めに、授業で『光』についての話を聞いたことです。いま見ている星はすでに消滅しているかもしれない。光が地球に到達するには時間がかかると。日常生活の中で音の速さは感じるけれど、光の速さは感じないですよね。それから光ってなんだろうと感じ、学んでみようと思いました」

 ――急に興味を持ったのですか。

 「中学2年まで、勉強はまったくしていませんでした。高校受験があるので、2年生の終わりから本気で勉強して、そのときに光にも興味を持ったという感じです」

 「高校受験は、親から自転車で通える範囲と言われ、成田高校に進学しました」

 ――その頃から物理など興味のある分野で大学に進学することは考えていたのですか。

 「中学3年の頃から行きたいなと思っていました。高校のときにも親に伝えたのですが、『ダメ』『そんなに勉強してどうするのか』と。金銭的な事情があったのだと思います。大学進学は諦めていました」

 「そんな経緯もあって、高校に入ってからは『自分の好きなことだけやります。後は知りません』と親に伝えて、物理、化学、数学だけ勉強していました。テストでは物理や数学は100点だけれど古典や世界史は一ケタでした」

 ――高校の物理や化学、数学の授業は面白かったのですね。

 「面白いですよ当然。波動や光、原子核のこともやって。物理と化学の境目くらいがとても面白かったですね。ただ、物理、化学、数学と科目ごとに切り離されている高校の授業では限界があると感じていました」

 「ブルーバックスのような科学の雑学書を読んだり、図解雑学の量子力学に挑戦してみたりということもしていました」

 ――千葉大への飛び入学の話はいつごろあったのでしょうか。

 「2年生の6月くらいに、朝の会で担任から千葉大が飛び入学の試験をすると聞きました。千葉大なら通える範囲で、国立大だし、科目は物理。これなら親を説得できるかなと思いました」

研究は充実 無一文の現実

https://www.asahi.com/articles/ASR3045KVR2GUPQJ00S.html