「桜を見る会」前日に安倍晋三元首相の後援会が主催した夕食会で新たな違法献金疑惑が発覚した。2015~19年の夕食会で計4回会場に使われたホテルニューオータニ(東京都千代田区)が酒の持ち込み料を無料にしていたのだ。刑事確定記録からは安倍氏側へのさまざまな配慮が浮かび、大物顧客の首相をつなぎ留めたいニューオータニ側の思惑が透けて見える。

◆他のホテル「政治家には厳しく対応」
 ニューオータニの19年の見積書によると、宴会場の室料も値引きされているが、同ホテルの営業担当者は供述調書で「数百人分の料理の注文があった場合などは一般のお客さまにも室料の値引きをしている」と説明している。一方、酒類持ち込み料をサービスした理由は記録には見当たらない。
 東京都内の他の大手ホテルの話では、同様に室料を値引きする場合はあるが、飲み物については無料での持ち込みを原則認めない例がほとんど。あるホテルは「飲料メーカーが宴会で自社製品を出す場合でも料金は取る。うちの場合はウイスキー1本で5000円程度だ」と明かし、別のホテルは「政治家には特に厳しく対応し、研修を受けた職員が違法性を指摘されないよう契約している」と強調する。
 ニューオータニは持ち込み料サービス以外でも、主催した安倍氏の後援会との宴会の契約だったにもかかわらず、秘書の依頼に応じ、参加者個人宛ての領収証を出す便宜を図っていたことも分かっている。供述調書によると、営業担当者は「当ホテルから参加者に領収書を発行するのは不自然だった」と認めた上で、その理由を「当時、内閣総理大臣だった安倍氏関連の宴会の受注を失うのは営業的に痛手だった」としている。

夕食会の実務を担った東京の秘書は供述調書で、参加者からの1人5000円の会費では費用を賄いきれず、差額を安倍氏側で補填てんすれば地元有権者に対する違法寄付に当たることを懸念して「飲食代金を抑えるために会場に酒を持ち込んだ」と述べている。
 東京地検特捜部元検事の郷原信郎弁護士は「違法な補填を形だけでも避けようと必死になる安倍事務所を、企業が助けたという構図。酒類を無償提供していたサントリーにしろ、ホテルニューオータニにしろ、事実上寄付の意味合いが強い」と指摘する。

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