メス、オス、バイセクシュアルの共存への性染色体革命 - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2023/8471/

2023/06/09

メス、オス、バイセクシュアルの共存への性染色体革命

――新規全ゲノム解読が性別3種類共存の頑強性を支持――


高橋 昂平(研究当時:博士課程 現:特任研究員)
東山 哲也(教授)
野崎 久義(客員共同研究員)


発表のポイント

・メス、オス、バイセクシュアルの3種類の性別が共存する種(トリオシー種)である緑藻プレオドリナ・スターリーの新規全ゲノム配列を構築して比較解析した結果、通常の生物がもつ性染色体のメス・オス特異的遺伝子に、本種では大規模な再編成が認められた。
・祖先種の性染色体を構成する遺伝子に大規模な進化があり、トリオシー種が誕生したことが明らかになった。
・ゲノムデータからトリオシー種の頑強性が支持され、3種類の性別が安定的に共存している生物種の存在が示唆され、性別の決定システムと性のダイバーシティーの研究分野に大きく影響することが期待される。



発表概要

東京大学大学院理学系研究科の高橋昂平特任研究員、東山哲也教授と野崎久義客員共同研究員による研究グループは、緑藻プレオドリナ・スターリー(注1)の全ゲノム解読を実施し、本種のもつ3種類の性別が祖先種の性染色体を構成する性決定領域(SDR)(注2)の遺伝子等の大規模な進化の結果誕生したことを明らかにしました(図1)。
これまで無脊椎動物やパパイヤ科の植物においてはメス、オス、バイセクシュアルの3種類の性別が共存するトリオシー種(注3)が知られており、トリオシー種は雌雄異体種(異株種)と雌雄同体種(同株種)の転換進化の中間的段階の不安定なものと考えられることもありました。
しかし本研究によって、プレオドリナ・スターリーの3種類の性別は性決定領域の遺伝子の大規模なゲノムレベルの再編成の結果で誕生したことが明らかになり、トリオシー種の頑強性がゲノムデータから初めて支持されました。
従って本研究成果は、メス、オス、バイセクシュアルという3種類の性別が共存しながら自然界で安定的に生存し続ける生物種の存在を示唆しています。
今後プレオドリナ・スターリーの近縁種で同様の研究を実施することで、トリオシー種の具体的な進化過程が明らかになると期待されます。



(以下略