「カイブツだ~れだ?」ホラーかサスペンスか 是枝裕和監督×坂元裕二脚本による〝心と時間〟のパズル 映画「怪物」

【エンタなう】

子どもの無邪気な声で、「カイブツだ~れだ?」と問いかけるシーンが想像をかきたてる。映画「怪物」とは、いったいどんな作品か。
公開後1週間、映画評やSNSの感想を拾い読むと、「禁じられた遊び」や「スタンド・バイ・ミー」にたとえたり、複眼的な視点を「羅生門」
になぞらえる形容がある。

そのエッセンスはあるかもしれないが、社会の不条理をエンターテインメントに昇華させる是枝裕和監督と、言語化できない感情の描写
まで鮮烈に描く坂元裕二脚本の掛け算が見事。ホラーか、サスペンスかという筆致で、〝心と時間〟のパズルを完成させていく。

シングルマザーの早織(安藤サクラ)は愛する息子・湊(黒川想矢)の言動から学校での異変を直感。問い詰めると担任の保利(永山瑛太)
から「湊の脳は豚の脳と入れ替わっている」と言われたという。学校に乗り込むが、校長(田中裕子)は無表情のまま詫び、とりつく島がない。

一転、保利の視点で描かれる中盤は、生徒想いで、保利は湊が同級生の依里(柊木陽太)をいじめていると見ていた。

3つ目の視点は、湊と依里、少年2人だけのやりとりで真実に近づいていく。歳を重ねて大人が見えなくなったものが、霧が晴れるように見えてくる。
坂本龍一の音楽は幻想交響曲を思わせるフレーズや金管の咆哮があり、子どもたちの叫びを象徴しているようだ。怖いほど飄々とした田中裕子が、
残すもやっとした余韻が対照的だ。(中本裕巳)

https://news.yahoo.co.jp/articles/062417a7f51f1be4d8042b8c79c28d93371bba6a