赤石氏らの現場検証の結果、ヒグマとの格闘の詳細が浮かび上がってきたという。

「彼は山の斜面に現れたクマを下から撃ち上げる形で弾を放った。後で判明したことだけど、その弾はクマの横隔膜を破り、背骨の横を通って背中でとどまっていた。ダメージを食ったクマは笹藪(ささやぶ)の中へと転げ落ちた。

彼はクマを仕留めたとホッとしてたばこに火をつけたのだろう。だがクマは生き残り、山をグルッと小回りして、一服中の彼に上から襲いかかった。そのままクマに頭や顔を前足で引っかかれた挙句に振り回され、数十m先までぶん投げられていた」

弾が命中しても死ななかった獣の状態を「半矢」と呼ぶ。

「半矢の状態で取り逃がしたクマは〝アドレナリン200パーセント〟の怒り狂った状態で必ず反撃してくる。そうなればハンター自身が命を落とすリスクが高まるばかりか、
そのクマが街に下りようものなら大変な事態となる。それだけ、ライフルで放つ弾には重たい責任が伴うということ。

だからこそ致命傷を与えにくい下方からの射撃は避け、撃つなら首か頭を狙って一発で仕留める必要がある。先輩の〝命〟は、その教訓を後進のわれわれに残してくれた」

だが、話はここで終わらない。現場検証をしていた最中も、半矢のクマがどこかに潜んでいる恐れがあった。隊員の多くは川の上流へと捜索に行った。
赤石氏もそれについていったが、クマの気配はなく、「何かが違う」と感じて遺体発見現場へ引き返した。

すると、笹藪の中へ進んでいった猟犬に驚いた手負いのクマが突如、赤石氏の目の前に現れた。


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