民主主義の声の代弁者がまた一つ、姿を消した。

 カンボジアの首都プノンペン中心部にある3階建てのオフィス。ここに、ラジオ局やニュースサイトを運営する独立系メディア「ボイス・オブ・デモクラシー(VOD)」があった。しかし、玄関に掲げられていた看板はもうない。

 「国民が事実を知る道の一つが奪われた。社会にとって大きな損失です」

 メディアディレクターのイス・ソスース氏(35)の穏やかな口調の奥には、危機感がにじんでいた。

 VODは2003年にラジオ番組の制作を始め、11年からはオンラインでニュースを配信。人権問題や選挙報道に定評があった。記者や編集者ら約60人が働いていたが、7月23日の総選挙が約5カ月後に迫った2月13日、政府から事業資格を停止された。

 資格停止の理由とされたのは、その4日前に配信した1本の記事だった。

https://www.asahi.com/articles/ASR7N6K8TR7KUHBI00S.html