https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-66413956

海水温が史上最高を更新、地球環境に厳しい影響

気候変動による熱を吸収した結果、地球の海水温が史上最高を記録した。環境に厳しい影響を及ぼしている。

欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービスによると、地球の平均海水温は今週、2016年の最高記録を破り、20.96度に達した。この季節の平均をはるかに超えている。

海洋は気候を調整するうえで、不可欠な役割を担っている。熱を吸収し、地球の酸素(O2)の半分を生成し、気象パターンを作り出している。

海水温が上昇すると、二酸化炭素(CO2)の吸収力が下がるため、大気中に温暖化ガスがより多くとどまることになる。氷河の溶解にもつながり、さらに海面が上昇する。

熱くなった海洋と熱波が、魚やクジラといった海洋生物の行動を変化させる。こうした生物が冷たい水を求めて移動すると、食物連鎖が乱れる。専門家らは、漁獲量に影響が出ると警告している。

高い温度に混乱したサメなどの捕食生物が攻撃的になる可能性もある。

米海洋大気庁(NOAA)でメキシコ湾の海洋熱波を観測しているキャスリン・レスネスキ博士は、「海に飛び込むとまるでお風呂のようだ」と語った。「フロリダの浅いサンゴ礁ではサンゴの白化が広がり、すでに多くのサンゴが死滅している」。

英プリマス海洋研究所のマット・フロスト博士は、「我々は海洋に、歴史上かつてないほどのストレスを与えている」と述べ、海洋汚染や乱獲などの影響にも触れた。
科学者たちは、今回記録が破られたタイミングについて懸念を示している。

コペルニクス気候変動サービスのサマンサ・バージェス博士は、海洋が最も暖かくなるのは8月ではなく3月のはずだと指摘する。

「今この記録が出たことで、来年3月までにどれだけ海洋が温まるのか不安になっている」と、バージェス博士は語った。

英スコットランド海洋科学協会でスコットランド海を観測しているマイク・バローズ教授も、「変化がこれほど急速に起きているのを見ると、気が重くなる」と述べた。

科学者たちは、なぜ今、海が熱くなっているのかを調査しているものの、海は気候変動によって温暖化し、温室効果ガスの排出による熱の大部分を吸収していると指摘する。

「人間が化石燃料を燃やすほど、余剰の熱が海に吸収されるため、海が安定化して戻の状態になるのに時間がかかる」と、バージェス博士は説明した。

今回破られた2016年の記録は、自然発生したエルニーニョ現象が最も活発で強力な時期のものだった。

エルニーニョ現象では、南アメリカ西岸沖で暖かい海水が海面まで上昇し、世界の気温を押し上げる。

新たなエルニーニョ現象が発達し始めているものの、科学者らはこれはまだ弱い状態だという。つまり、海水温は向こう数カ月でさらに平均を超えてくる可能性がある
海水温の記録更新の前には、イギリス沿岸や北大西洋、地中海、メキシコ湾などで多数の海洋熱波が見られた。

バローズ教授は、「我々が目にしている海洋熱波は、予想もしていなかった珍しい場所で起こっている」と述べた。

英気象庁と欧州宇宙機関(ESA)によると、イギリスの領海では今年6月、海水温が平均より3〜5度高かった。

米フロリダでは先週、海面の温度が38.44度と、大浴場並みだった。

NOAAによると、通常であれば海水温は23〜31度だという。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、海洋熱波の頻度は1982年から2016年の間に2倍に増えている。また、1980年代から勢力も強くなり、期間も長くなっているという。

大気温はここ数年で劇的に上昇している。一方で海は、温室効果ガス排出の90%を吸収しているにもかかわらず、温まるまでに時間がかかる。

しかし、海水温の上昇も、気温に追い付いてきているようだ。海の深くに貯めこまれていた大量の熱が、恐らくエルニーニョ現象との関係で表面へと上がってきているという説も出ていると、メルカトル・オーシャン・インターナショナルのカリーナ・フォン・シュックマン博士は話した。

科学者たちは、温室効果ガスの排出によって海面が温暖化し続けることは知っていたが、なぜ海水温が例年を大きく上回ったのか、その正確な理由を調査中だ。