https://mainichi.jp/articles/20230811/k00/00m/030/147000c

20日に投開票が予定される南米エクアドルの大統領選で、有力候補の一人が暗殺され、同国で深刻化する治安悪化が影を落としている。
ラソ大統領は10日、非常事態を宣言し、軍や警察による警備を強化した。ただ、候補者の中には事件を受けて選挙運動を中止する動きも出ている。

地元メディアなどによると、暗殺されたのは、中道右派の元国会議員、フェルナンド・ビジャビセンシオ氏(59)。
9日、首都キトで集会を終え、車に乗り込もうとした際に頭部を数発撃たれ、死亡した。当局によると、銃撃戦で容疑者1人が死亡し、ほかに6人が拘束された。当局は10日、7人はいずれもコロンビア国籍だと発表した。

 コカイン生産国のコロンビアとペルーに挟まれたエクアドルは麻薬の密輸拠点で、メキシコのカルテルなどが暗躍しているとされる。
ジャーナリストでもあったビジャビセンシオ氏は選挙戦で、麻薬密売に関わる犯罪組織や汚職の問題を批判。
事件直前の世論調査では支持率2位との結果も出ていたが、犯罪組織に狙われた可能性がある。

ラソ氏は事件後、ソーシャルメディアで「犯罪が罰せられないことはない」と強調。10日には米連邦捜査局(FBI)に捜査協力を要請した。
ただ、ロイター通信によると、ビジャビセンシオ氏のほかに立候補している7人のうち、既に2人が事件を受けて選挙運動を中止したという。
ラソ氏は今回の大統領選には出馬していない。

 今回の大統領選は、国営の石油関連企業をめぐる不正疑惑が浮上したラソ氏が今年5月、罷免を避けるために国会を解散したことから、
当初の25年から前倒しで実施される。現在のところ、10月15日の上位2人による決選投票にもつれこむ公算が大きい。