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災害時の明暗分ける「立地のリスク」の深刻度 防災対策は「水や食料を買い込んでおけばよい」ではない

1月1日に発生した令和6年能登半島地震では、大きな揺れによる建物倒壊、地震後の火災、津波、土砂災害のほか、高台等に建てた住宅の崩落、地盤の液状化、それによる地盤の変状(変形)など、さまざまな被害が見られました。

【画像で見る】液状化現象によって、緩い斜面の地盤がすべるとどうなるか?

 中には、ある特定の地域に被害が集中しているケースがあり、この場合は「立地」に課題があったと考えられます。

 家を購入する際、多くの人は“駅近”や交通アクセスなど利便性を優先します。しかし、ひとたび災害が起きると、立地によって被害の程度に差が生じ、自宅に住み続けられなくなったり、最悪の場合、自身や大切な家族の命を失ってしまったりします。

 建物は耐震改修などの対策ができますが、立地は後から変えることはできないのです。

 「立地」はそこに住む人々の命や暮らしに直結する「最高の資産」です。本稿では「立地のリスク」について考えてみたいと思います。

 *外部サイトでは図表をすべて見られない場合があります。その場合は本サイト(東洋経済オンライン)内でご覧ください。

■立地による災害リスクの実態

 不動産取引時においては土砂災害(特別)警戒区域や津波災害警戒区域、大規模盛土造成地について重要事項説明書に記載するよう法律で定められています。2020年8月からは水害ハザードマップ(水防法に基づくもの)の該当有無についても説明が義務づけられています。

 しかしそれ以外で、個々の居住世帯に対して災害リスクを伝える義務や定めは現行の法律には基本的にありません。

 令和6年能登半島地震では、金沢市に隣接する河北郡内灘町周辺の一角で、集中的な家屋被害が発生した地域がありました。液状化現象によって、緩い斜面の地盤がすべった「側方流動」と呼ばれる現象が起きたものとみられます。

 私は震災後、この地域に入り現地調査をしましたが、大地に地割れが走り、住宅の下の地盤が流出や沈下をしていました。
 地面の動きで引き裂かれた古い家屋、土中深くに埋まったガレージ、波打ったり高く押し出されたりした道路など、元の敷地境界の確定すら難しいほど甚大な被害が起きていました。

 液状化現象によって、家がその場所で地盤沈下したのみではなく、土地ごと斜面を移動してしまった被害でした。

 同様の被害は内灘町の全域ではなく、砂丘の内陸側にある緩い斜面のエリアに限定して集中的に見られました。被災された方への聞き取りでは、次のような声がありました。

・50年以上住んでいるがこんなことは初めて。これまでは災害自体にも遭ったことがない

・地震保険にも加入しておらず、復旧には数百万円以上はかかるだろうが、実際にいくらかかるかわからない

・自宅が倒壊したので引っ越しの必要性を感じているが、自宅の解体費用を出せない。このような地域だとは考えもしなかった(石川県ではその後、公費解体制度が実施されることになりました)
 今回のように、側方への地盤の流動と著しい沈下を伴って、土地の形状をも変えてしまった被害は、家屋の沈下修正のみで解決できるものではありません。大きく動いた地盤を元通りにすることは、個人で賄えるレベルを大きく超えているものと考えられます。

 なお、被害の発生した各地点は、町の液状化マップ等ではリスク表示がされているエリア、またはその近郊であることが多く、一定の注意喚起はなされている状態でした。

 しかし、居住者の聞き取りでは「液状化マップの存在すら知らなかった」という話もありました。個々の居住世帯に対して災害リスクを伝える義務がない、ということがこのような事態にもつながっているのです。

■私たちはどうすればいいのか? 

 まず、地震に限らず台風等による水害や土砂災害でも、立地によってリスクの大小は全く異なる、ということを知ってください。「どこに住んだとしても、災害が起きたらどうしようもない」という声もありますが、これは違います。