■賢い企業が最重視するのは「不適正な人間を採らないこと」
そこで、日本の政党は最低限の仕組みとして、日本の大手企業が採用している人材採用のシステムの導入を進めることが望ましいだろう。
企業の採用活動は同企業の生死を分ける重要な業務であり、採用活動に関するテクノロジーは急速に進化している。特に企業側は問題がある人物を特定して「不採用」とすることには極めて熱心だ。なぜなら、一度雇用した人間をクビにするのは困難であり、なおかつ社内でトラブルを起こされた場合の損失も馬鹿にならないからだ。企業経営者は優秀な人物を採りたいと願うものだが、賢い企業は優秀さよりも不適正な人間を採らないことを心掛けているのだ。
たとえば、一昔前から採用プロセスではAIが活用されており、人間が介入せず、事前に用意された質問に対して回答させ、その声、表情、しぐさなどを分析して自動的にパーソナリティ診断を行う仕組みが導入されてきている。同システムを一次面接に利用することで、人間によるバイアスを排除した客観的なデータを得ることができる。
また、そこまでのシステムを用いなくても、賢い企業は全ての就職希望者に対してシステムを用いた不適正検査を実施している。そのために必要なコストは比較的安価であり、中小企業でも導入が可能だ。不採用を判定するためのシステムは、履歴書・経歴書に記載されたご立派な肩書等以外の組織人として重要要素を持っているか、を判定するのに活用される。
■半年以内に、野党は公認候補者を「無理やり」立てていく
政党が公認候補者の不採用を判定するシステムを導入するメリットは極めて大きい。
自らが手を挙げて政治家になろうという人物は、実はそれなりに立派な肩書の人物が少なくない。しかも、愛想も悪くない人物も多いため、その人物がスキャンダル体質や不和を起こす人物であるかを人間が見極めることは難しい。したがって、客観的に一定の判断材料を与えてくれるシステムを導入することには非常に意味がある。
また、人材不足で背に腹は代えられず、ほぼ全ての公認希望者に党として公認を出さざるを得ない場合であっても、事前にその人物のパーソナリティのリスク情報を把握できているか否かは、その後のリスク対応に天と地ほどの差が出る。その公認候補者がどのようなトラブルを起こしやすいのかを知った上で、様々な助言をすることができるからだ。
冒頭に述べた通り、岸田政権は風前の灯であるが、野党は十分に小選挙区で旗すら揚がっていない状態だ。今後、選挙が強く意識される半年以内に、野党は多くの小選挙区で公認候補者を無理やり立てる作業を進めていくことになる。しかし、その公認作業の過程で不適切な人物が多数含まれることがあれば、野党は選挙後の政権交代どころか、政党運営すらままならなくなるだろう。
現状の日本の政党政治は政策の議論を行う以前の状態であり、政党を一般常識的なレベルで運営できる体制にすることから始めなくてはならない。その第一歩が政党の公認候補者として「マトモな議員及び立候補予定者を揃えること」である。
筆者は、日本の政党が近代化し、健全な政党政治が行われるようになることを強く願っている。