NASAの「小惑星に宇宙船をぶつけて軌道をずらす実験」で想定以上に小惑星の軌道が変わったことが判明
「地球に衝突しそうな小惑星や彗星(すいせい)の軌道をずらす」と聞くとSF映画や小説のようですが、実際にアメリカ航空宇宙局(NASA)は2022年9月、小惑星に宇宙船をぶつけて軌道をずらす能力を実証する「DART」というミッションを実行しました。
すでに宇宙船が小惑星にぶつかったことは確認されていましたが、新たにNASAが「小惑星の軌道がどれだけずれたのか」を発表しました。
DARTミッションでは冷蔵庫サイズの無人宇宙船「DART」を飛ばし、地球近傍小惑星のディディモスを公転する直径約170mの衛星・ディモルフォスに衝突させ、軌道を変えることが目標とされていました。
なお、ディディモスおよびディモルフォスは2.1年周期で太陽を周回していますが、地球に脅威を与えるとは考えられていません。
現地時間の2022年9月26日、DARTは見事にディモルフォスと衝突しました。この際、衝突寸前のDARTが撮影したディモルフォスの映像も公開されています。
NASAは衝突から2週間にわたりデータ収集と分析を続け、10月11日に「DARTがディモルフォスの軌道を変えることに成功した」と発表しました。
ディモルフォスはDARTの衝突前、ディディモスの周囲を11時間55分で周回していましたが、衝突後はディモルフォスとディディモスの距離が数十mほど縮まり、周回時間が11時間23分に短縮されたとNASAは報告しています。
NASAの惑星科学部門ディレクターを務めるロリ・グレーズ氏は「皆さん、ちょっとだけ時間をとって今回のことに浸りましょう……史上初めて、人類は小惑星の軌道を変えたのです」とコメントしました。
当初、DARTミッションを「成功」と位置づける基準として設けられていたのは、「周回時間を73秒以上変えること」でした。
DARTの衝突後、NASAは「最大で10分近く周回時間が変わるかもしれない」と予想していましたが、実際の観測結果は想定を大幅に上回るものだったことになります。
https://gigazine.net/news/20221012-nasa-success-dart-changed-asteroids-motion/