トッド そうですね。たとえば二つの国の勢力が対立すると、その後にはその周りにいた国が台頭してくる、ということは歴史のなかでもありました。
第1次世界大戦もヨーロッパのなかで対立が起き、ヨーロッパは自殺するような形で崩れていきました。一方で、対立のなかからアメリカの覇権というものが生まれましたよね。
その意味で、池上さんのおっしゃったような国々が勝者のような形になることはあり得ると思います。ただ、それらの国は世界の覇権を取るほどではありません。
インドという国は、確かに人口が多いんですけれども、ひじょうに多様な国で、またムスリムの人口も多いなど多宗教で本当に不確実なので、ちょっとわからないというところがあるんですけれども、そこまで世界を支配するほどの勢力ではまだない。サウジアラビアなんかもそこまででもないですね。
むしろ、ロシアが勝者になる可能性があるんです。この戦争は単なる軍事的な衝突ではなく、実は価値観の戦争でもあります。西側の国は、アングロサクソン的な自由と民主主義が普遍的で正しいと考えています。一方のロシアは権威主義でありつつも、あらゆる文明や国家の特殊性を尊重するという考えが正しいと考えています。そして中国、インド、中東やアフリカなど、このロシアの価値観のほうに共感する国は意外に多いのです。
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