群馬県をはじめ北関東で相次いだ家畜や果物の大量窃盗事件に絡み、太田市のベトナム人グループが群馬県警に入管難民法違反容疑で摘発されて2週間を迎えた。
グループの一部はSNSを通じて肉や果物を県内外のベトナム人に転売したとみられ、他に違法に豚を解体したグループが摘発されているが、盗難被害との関連は依然として判然としない。事件の背景として、コロナ禍で働く場所を失った外国人の厳しい境遇も浮かび上がる。

 豚720頭、鶏140羽、ナシ5700個―。県内での被害は甚大で、他に茨城、栃木、埼玉各県などでも被害が確認されている。県内で入管難民法違反容疑でベトナム人13人のグループ、と畜場法違反容疑で同4人がそれぞれ逮捕され、埼玉県でも摘発されている。

■「帰るお金ない」
 このうち入管難民法違反容疑の男女13人が住んでいた太田市新田上中町のアパートには摘発後、大阪府などから移った在留資格のあるベトナム人女性(21)ら5人が残された。
頼ってきたリーダー格で「群馬の兄貴」と自称する男(39)が逮捕され、女性は「SNSを通じてここにきた。ベトナムに帰りたいけど、お金がない」と窮状を訴える。

 捜査関係者によると、逮捕された13人のうち10人は技能実習生として来日、茨城や埼玉、熊本など全国各地で実習していた。
しかし、日本語の学習費用や送り出し機関への仲介料で100万円前後の借金を抱えていた上、過酷な勤務や待遇への不満などから失踪。SNSや知人を介してベトナム人コミュニティーを頼り、同市に集まってきたとみられる。

■労働環境の改善
 実習生を受け入れる各地の監理団体は、実習生が計画通りに働いているのか監理し、実習生を保護する役割を担う。ただ、県内の監理団体関係者は「悩みを抱える実習生のサインに気付けない、気付こうとしない監理団体は多い」と指摘。
その上で「実習生を奴隷のように働かせる実習先も少なくない。労働環境の改善も必要だ」と訴える。

 出入国在留管理庁は、大量に失踪者を出した実習先や監理団体には新規受け入れを停止させているが、失踪者は後を絶たない。担当者は「SNSでの甘い言葉に誘われ、実習生が犯罪に手を染めるケースが増えている。いかに失踪を未然に防ぐかが課題だ」としている。

 400頭以上の豚を盗まれた前橋市の養豚業の40代男性は「こうした犯罪が繰り返されないためにも、誰が豚を盗んだのか、(容疑者らが)知っているなら全てを話してもらいたい」と語った。


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