イギリスの経済誌『エコノミスト』が毎年公表している「ビッグマック指数」は、日本の物価の安さを端的に示している。
これは、全世界で展開しているマクドナルドの看板商品「ビッグマック」の値段を比べることで、各国の物価格差の目安とするものだ。
今年、日本において390円で売られているビッグマックは、アメリカでは645円、イギリスでは522円、スウェーデンでは681円で売られている。
先進国だけでなく、タイ(429円)やブラジル(480円)といった新興国でも、日本より高く売られている。
コロナ前、世界各地から外国人観光客が押し寄せていたのも、日本の洗練された文化に憧れたというより、
「あまり懐を痛めずに食事や買い物を楽しめる旅行先」として選ばれていただけかもしれない。

給料も物価も世界にすっかり取り残された日本経済に、かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた時代の面影はまったくない。
日本円は、何らかの理由でドルが売られたときの退避先として、世界から重要視されてきました。
それはあくまで日本経済が強く、値崩れしないと思われていたからです。
しかし、いま退避先として選ばれているのはユーロなので、円はどんどん買われなくなっている」(経済評論家の加谷珪一氏)

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一朝一夕には解決できない根本的な要因が限界まで積み重なっているがゆえに、円安は悪化の一途をたどると考えられている。

「円安は早ければ年内にも120円、125円と進む恐れがあります。'22年に入ったら、130〜135円まで覚悟する必要があるでしょう」
(シグマ・キャピタルチーフエコノミストの田代秀敏氏)

円安がここまで進むと、海外から輸入している小麦や肉、魚などの品物の値段が上昇し、家計を直撃する。
輸入物価の上昇によって、皮肉にも長年上がらなかった日本の物価は、じわじわと高まりはじめる。賃金は上がらないのに、物価ばかりが上昇する「悪いインフレ」だ。
国内で働いていても家族を養うことができないと、他の国に「出稼ぎ」に行く日本人も出てくるだろう。
働くことのできる現役世代は、まだいい。だが、年金世代は、何もしなければ財産がインフレで目減りしていくジリ貧に陥るしかない。


https://gendai.ismedia.jp/articles/-/89451