5月発表の国勢調査によると、中国の2020年の出生数は1200万人と前年比18%の大幅減であった。皮肉なことに「二人っ子政策」を始めた16年の1786万人から毎年減少が続いている。21年には建国後最低になる可能性があり、習近平政権は危機感を強めている。

 出生数減少は、将来の労働力投入減少に直結し、高成長を支えてきた生産年齢人口の増加=「人口ボーナス」が、成長低下をもたらす「人口オーナス」に転じることになる。このままいくと、習政権の恐れる「未富先老」(豊かになる前に老齢化する)という事態になりかねない。

 対策は難しい。出生数減少の背景には、子どもの養育をめぐる社会情勢の急速な変化があるからだ。婚姻し、出生に臨む世代は「一人っ子」世代で第二子以降を望まない傾向が強いし、教育費の高騰がそれに拍車をかけている。そもそも持ち家所有が婚姻の前提とされる習慣が根強く、婚姻へのハードルは高い。

 また、出生数減少は老齢化を加速する。20年の老齢化率(65歳以上人口比率)は13.5%で、21年には14%超と国際基準でみた「高齢社会」に突入する。老齢化率が7%から14%になるのに要した期間が21年間と、日本の25年間より短いことも要注意である。過去10年間で老齢人口は6割増加し、現役世代3.5人が高齢者1人を支える構図となった。財政的には、減少する現役世代で社会保障負担増に堪える事態が続く。

 出生数減少に対し、中国政府は8月に3人目の出産を認める法改正を行った。改正には、保育サービス拡充や産児制限違反に対する罰金の廃止なども盛り込まれているが、先進国の経験からみて、もっと手厚い支援がなければ効果は望めないであろう。

 老齢化に対しては、19年に「人口高齢化に積極的に対応するための国家中長期計画」が発表されていた。そこでは、(1)養老財源の確保、(2)人的資源開発による労働力供給の改善、(3)質の高い高齢者サービスの供給、(4)高齢化対応のイノベーション強化、(5)高齢者に優しい社会の構築、などが掲げられている。

 今年開始の第14次5カ年計画では、「人口老齢化に積極的に対応する国家戦略を実施する」との章が設けられた。老齢者と育児を取り巻く環境の改善に同時に取り組む「一老一小」をスローガンに、医療・コミュニティーと連携した高齢者介護、包摂的な託児サービス体系の整備などを推進しようとしている。

 国家戦略に格上げされたこれらの施策が効果を上げるのか、今後とも注目していく必要があるだろう。https://news.yahoo.co.jp/articles/dd67331840dc98b46fd1cee27b5a2ab8cec5351f