ICPO新総裁にUAE高官 「過去に拷問関与」欧州が懸念
パリ=疋田多揚2021年11月25日 20時18分

 国際刑事警察機構(ICPO、本部・仏リヨン)は25日、トルコ・イスタンブールで開催中の年次総会で、新総裁にアラブ首長国連邦(UAE)内務省のライーシ監察長官を選出した。同氏は自国で反体制派への拷問に関与したなどとして人権団体などから告発されており、就任に懸念が示されていた。

 任期は4年。AFP通信などによると、UAEは近年、ICPOに巨額の寄付をするなどして影響力を高めてきた。事実上2番目の拠出国だという。

 ICPOは、国際犯罪の情報収集や、国境を越えて逃亡した犯罪者の逮捕に結びつける国際手配書の発行が主要な任務。レバノンに逃亡した日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告にも、国際手配書が発行されている。

 憲章で「各国の国内法の範囲内」で活動すると定められ、独自に捜査する権限はないが、事務総局には各国から提供された国際犯罪者に関する情報や指紋、DNAなどがデータベースとして蓄積されている。

 AFP通信などによると、ライーシ氏はUAEで反体制派の男性が国家の名声を損なったとして2018年に実刑判決を受けた際、刑務所の4平方メートルの房に収容し、不衛生な環境で放置していたとして、人権団体に拷問の疑いで告発されている。

 仏紙ルモンドは社説で、UAEが中国やロシア同様、国際手配書を自国の政治目的に使ってきたと指摘。「人権を侵害する国として知られる国の、拷問容疑で訴えられている人物が国際法を守るべき機関の新総裁に選ばれるのは破滅的だ」などと選出を避けるよう呼びかけていた。

 総会では、13人からなる執行委員会に中国の胡彬郴・公安省副局長も選ばれた。胡氏の就任については、国外のウイグル族を逮捕するのに国際手配書を使おうとしたとして、欧米を中心とした約50人の国会議員らが反対する書簡を公表していた。



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