越境阻まれ、森で２０日間 ベラルーシ国境、臨時避難所に２千人
普段は大型トラックが出入りする国境検問所脇の巨大な倉庫が、「欧州で難民認定を」と願う人々であふれていた。
２メートル四方ごとに複数の家族が毛布を持ち込んで肩を寄せ合う。
ポーランド国境まで数百メートルのベラルーシ・ブルズギにある運輸物流センターが臨時の避難所に変身していた。
欧州を目指す移民・難民の避難所を何度も取材したが、これほど子連れの家族が多いのは初めてだ。
イラク北部から来たヘーシューと名乗る女性（２７）は夫とともに２〜７歳の娘３人を連れていた。欧州連合（ＥＵ）域内に入ろうと森で過ごした２０日間は、
テントもなく、雨にさらされた。１１月に入ると夜間は気温が零下に。寒さで眠れず、死の恐怖を感じた。それでも家族でドイツを目指す。
「自分たちのためじゃない。子供の未来のためだ」
収容された移民・難民はざっと２千人以上。ポーランドの治安部隊に越境を阻まれ立ち往生し、数日前まで森に寝泊まりしていた。
ベラルーシ政府がここに収容したのは今月１８日。記者は国境警備隊の許可を得て２日後に現地を訪れた。
中東、アフリカから欧州を目指す移民・難民の主なルートは南の地中海かエーゲ海。ほぼ無縁だったポーランド・ベラルーシ国境に突然、
大勢の移民・難民が現れたのは今年８月ごろだ。驚いたポーランド政府は軍を投入。催涙ガスや放水車まで使って越境を断固阻止する構えだ。
ムハンマド・タハルさん（２９）は５６歳の母親と９歳の娘を連れ、２２日間で５回、国境を越えたという。
いずれもポーランド警察に捕まり、ベラルーシ側に戻された。「『森で死ぬのはいやだ』と訴えたが、放水砲を浴びせられた」
ＥＵやポーランド政府は怒りを隠さない。
ベラルーシのルカシェンコ政権が、反政権派弾圧を理由にＥＵに科された経済制裁の報復として送り込んでいるとみているからだ。
タハルさんも含め、避難所ではイラク北部のクルド人自治区出身者が多数を占める。トルコで旅行会社からベラルーシのビザを受け取っていた。
欧米がベラルーシ政府の主導を疑わない理由の一つだ。彼らは難民支援の整わないベラルーシにとどまることを想定していない。
ポーランド政府によると、国境越えの試みは９月に７７００件、１０月に１万７３００件と急増。軍投入を批判するベラルーシとの宣伝合戦にも発展した。
だが、ハウレさん（３０）は「我々が欧州に来るチャンスは限られる。今回はベラルーシが国を開いてくれた」と訴えた。
いかそ
https://www.asahi.com/articles/DA3S15120102.html
