[ロンドン発]1941年12月8日未明(米時間7日)、日本海軍が米ハワイ真珠湾軍港を奇襲し、太平洋戦争が始まった。真珠湾攻撃から間もなく80年。
真珠湾攻撃からドイツの独裁者アドルフ・ヒトラーがアメリカに宣戦布告するまでの5日間を詳細に検証した共著『ヒトラーのギャンブル 対米宣戦布告(Hitler's American Gamble)』 が出版された。【木村正人(国際ジャーナリスト)】

12月11日にヒトラーがアメリカに宣戦布告すると決断したことが真の転換点になったというのだ。これまで対米宣戦布告はヒトラーの「誤算」と考えられてきた。
英首相ウィンストン・チャーチルも回顧録の中で、真珠湾攻撃を知り「今この瞬間、私はアメリカが戦争の最中にいることを知った。つまり私たちは勝ったのだ」と叫んでいる。

そしてこう続ける。「戦争がどのぐらい続くのか、どのような形で終わるのか誰にも分からない。あの瞬間、私も気にもしていなかった。負けるわけにはいかない。私たちの歴史が終わることはないだろう。
ヒトラーの運命も、ムッソリーニ(イタリアの独裁者)の運命も決まった。日本人は粉々にされてしまうだろう。あとは圧倒的な力を適切に行使するだけだ」と。

<米の対独戦参戦を「不可避」とは考えていなかったチャーチル>

しかしシムズ教授によると、チャーチルは、アメリカの対独戦参戦を「不可避」とは考えていなかった。
最も心配していたのは日本軍がアジアのイギリス領を攻撃してもアメリカは指をくわえて見ているだけではないのかということだった。
アメリカは軍事物資の貸与から手を引き、全精力を対日戦争に傾けるかもしれない。そうなるとイギリスはさらに窮地に立たされる。

フランクリン・ルーズベルト米大統領も米議会の孤立主義勢力が対日戦争だけを望んでいることを知っていた。実際「将来、恥辱として記憶に刻まれる日」で始まる演説で、ルーズベルトはドイツには一切触れず日本だけに絞った宣戦布告を行っている。
「ルーズベルトや米介入主義者、連合国を解き放ったのはヒトラーだ」とシムズ教授は指摘する。

米大統領、国際資本主義、世界のユダヤ人が自分の破滅を望んでいると確信したヒトラーは枢軸国が優位に立っている間に主導権を握ることを選んだと結論付ける。
ヒトラーが対米宣戦布告をしていなかったら、ロシアやイギリスから資源を奪い、大戦の行方は変わっていたかもしれないというのが、シムズ教授らが投げかける「歴史上のイフ(もし)」である。

https://news.yahoo.co.jp/articles/81eb2fe8fda6135bd95996fedf9d4256223d0521