『オッドタクシー』動物アニメの皮をかぶった本格ミステリー作品【語りたがる俺のための必修アニメ #02|吉田尚記】
https://news.yahoo.co.jp/articles/3b34f08bdf65fad6ff94aedd3a3bfb8d7b4f2457

クオリティの高さに驚かされるアニメ作品は数知れず。その中から、いま最も観て欲しい一本を紹介しよう。
今回取り上げるのは、テレビアニメ「オッドタクシー」だ。

動物アニメに警戒心を抱く人はいません。動物が人間の言葉で会話しているアニメがあったら、
子どもたちに見せても安心・安全な倫理観ある作品だと思うのが普通です。しかし、味噌汁をお椀で飲まなきゃいけないと決まっているわけではないように、
動物アニメだからって、別に健全である必要はない…!

今回取り上げるのは、テレビアニメ「オッドタクシー」。主人公は、セイウチのタクシードライバー・小戸川。“東京のような街”を舞台に、
小戸川と乗客、そして数少ない友人たちとの会話が一つの少女失踪事件へとつながるミステリー群像劇です。
ところが、二頭身デフォルメ寄りのキャラクターたちからは、危険な薫りはまったく漂ってきません。料理にたとえるならば、
動物アニメという“器”に本格現代ミステリーという“料理”がのっている、工夫を凝らした一品だといえるでしょう。

「制作者が意図したモノ以外は、画面に登場しない」というアニメの特質は、伏線の乱れが許されない緻密な脚本には最適です。
そしてキャラクターたちは、意図的にステレオタイプに描かれています。地下アイドルグループ、大学生YouTuber、ゴロツキ、ラッパーのインテリヤクザなど。
これらがすべて紋切り型なのにも、視聴者の想像力をあえてシナリオの行く先にのみ集中させようとする制作側の意志を感じます。
重要なのは視聴者が味わうスリルであり、過剰なキャラクターの味つけは要らないわけです。純粋脚本作品です。

ここまでの紹介で、要するに「動物アニメで偽装したかったミステリー作品」、なるほどそれでアニメにしたのね、と思われたかもしれませんが、最後の最後、
この作品を作るにあたりアニメという表現手法でなければならなかった理由が、もう一つ織り込まれているのです。
ネタバレになってしまうのであえて言いませんが、最終回を見た私の感想は、「アニメがハックされた…!!」です。
見応えのあるストーリーに加え、アニメのさらなる可能性を感じられるでしょう。最終話にどんな結末が待ち受けているかは、ご自分の目でどうぞ。