総選挙で議席を大きく伸ばした「日本維新の会(以下、維新)」は、改憲論議に火をつけ、国民民主党とも連携して存在感を高めようとしている。
維新の副代表、吉村洋文・大阪府知事はアイドル並の人気である。

 コロナ禍で、頻繁にテレビのワイドショーに出演してメッセージを伝える姿に「率先垂範」「吉村さん、ようやってはる」と好感度はアップ。
疲れて目の下に隈ができていると『#吉村寝ろ』のツイートが殺到し、「ちゃんと寝てます。しんどいのは府民、国民の皆様の方です。
(略)国難を一致団結して乗り越えましょう」と打ち返す。

 メディアを使った反射神経のよさが、ますます人気をかきたてる。実際、吉村氏は大わらわなのだろう。
結果的に新型コロナのパンデミックが維新と吉村氏の人気を引き上げた。

 が、しかし、である。マスコミがつくるイメージと客観的なデータの食い違いは大きい。

 都道府県別の人口100万人当たりの新型コロナ死者数を比べると、大阪府は347.60人と飛びぬけて多い
(11月24日現在・札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所データより)。全国平均の2倍以上だ。

 夏の第5波で医療崩壊が際立った東京都は227.28人と大阪府より100人以上少ない。大阪府の次に死者数が多いのは、観光での流動人口が大きく、
寒冷で高齢者施設や医療機関でクラスターが数多く発生した北海道で280.38人。その次が観光立県の沖縄で273.92人。大阪の隣の兵庫県の255.40人とつづく。

 大阪のコロナ死者数の多さは印象論で語ってはいけないだろう。2020年4月に松井一郎・大阪市長が大量の雨合羽を医療機関に送り付け、
「滅菌処理もされてない。規格もバラバラで善意の押し売りは勘弁してほしい。どこで使えばいいのか」(大阪市内の病院関係者)と困惑と混乱を招いたことや、
同年8月、吉村知事が唐突に「ウソのようなホントの話をさせていただきたい」と切り出して「ポピドンヨード(=イソジン)でうがいをすると、コロナの陽性率が減少する」
と言ってフェイクニュース扱いされたことがあった。

 確かにこれだけでも十分危うい橋を渡っているイメージを抱くが、しかし、印象論では死亡者数の多さは語れない。客観的な事実から説き起こしてみよう。

アメリカ、インドよりも悪い数字

 全国的には今夏の第5波、患者自宅放置状態の惨劇が記憶に新しいだろうが、大阪の医療が大崩壊したのは、その前の4〜5月の「第4波」によって、だった。
拙著、『コロナ戦記 医療現場と政治の700日』の「第10章 大阪医療砂漠」で詳述したが、ゴールデンウィーク前後の大阪では目抜き通りから
一歩入ったコロナ感染者の家々のカーテンは閉められ、「見捨てられた」と家族は打ちのめされていた。

 第4波では、英国由来のアルファ株が猛威をふるった。

 4月1日から5月20日までに全国でコロナ感染者2870人が亡くなっているが、そのうち大阪府内の死者数は884人と、全体の30.8%を占めた。感染者の「入院率」は、
わずか10%まで落ちる。医療の受け皿がなく、自宅療養もしくは入院・療養等調整中で自宅待機を強いられた人の数は、5月半ばに1万8000人を超える。

 そのころの大阪の人口当たり2週間累計の死亡者数は、米国やインドよりも多く、世界最悪の水準に近かった。

 確かに変異株の感染力は強く、重症化のスピードは速い。とはいえ、大阪の医療体制の崩れ方は尋常ではなかった。なぜ、そうなったのか。

以下ソースで
https://news.yahoo.co.jp/articles/0f1de747d7ae8ad81795a5d84cfbc2ff0ac169a0