文在寅政府は、コロナ拡散初期の昨年2月29日から今年10月31日までの1年8カ月間、ソーシャルディスタンスの確保を続けてきた。私的な集まりや行事の人数制限、各種事業場の営業時間制限などを厳しく行ってきた。

 今年7月からは、それまで5段階に分けられていた防疫基準を4段階に再編、そしてもっとも厳しい第4段階での規制措置を実施した。「昼間は5人以上、夜間は3人以上の集合禁止」、「飲食店などの営業場は22時まで」、「クラブなどの遊興施設の営業中止」、「行事禁止」、「1人デモ以外の集会禁止」といった強力な統制だった。文在寅大統領はこの4段階の規制措置について、「太く短く終わらせる」と言ったが、結局3カ月も続けられた。

 この強力なソーシャルディスタンスにもかかわらず、韓国内の新規感染者数は2000人台まで増加した。当局が定めた防疫規則通りなら、引き続き4段階の距離を置かなければならない状況だった。しかし、来年の大統領選挙を控え、悪化した国民世論をなだめなければならない文在寅政府としては、これ以上ソーシャルディスタンスを維持することはできなかった。

 何より、韓国労働市場の4分の1を占める自営業者たちが、政府の防疫方針に強く反発していたのだ。大半の自営業者は、この1年8カ月間、集合禁止措置により、営業ができなかったり、営業時間制限で収入が大幅に下がったりしているのに、政府から防疫方針に対する損失補償を受けることができなかった。生死の岐路に立たされた自営業者らの自殺が次々とニュースになり社会的問題化していた。自営業者らは非常対策委員会を立ち上げ、政府の防疫措置に対する本格的な集団行動への突入を予告した。来年3月の大統領選を控え、家族合わせて1000万人に達するとされる自営業者たちを敵に回せば「共に民主党」による政権維持を望む文在寅政権にとって大きな障害になるに違いない。

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