“戸籍上の性別は男性 性自認は女性” トイレ利用でトラブル
2021年12月10日 5時14分 LGBTQ

大阪の商業施設で戸籍上の性別は男性で性自認は女性の客が女性用トイレに入り警察に通報されるトラブルがありました。専門家はどうすれば多様な性を認めながら共に生きていけるか考えていく必要があると指摘していて、警察は刑事事件として扱うべきか慎重に検討しています。

捜査関係者によりますとことし5月、大阪市内の商業施設で戸籍上の性別は男性で性自認は女性の40代の利用客が女性用トイレに入り、施設から警察に通報されるトラブルがありました。

警察が事情を聞いたところ「子どものころから女性用のものが好きで、自分は女性だと自覚している。戸籍上は男性なのでだめだとわかっていたが女性として女性用トイレを使った」と話したということです。

この利用客は職場では男性として働いているということですが、休みの日には女性の服を着て外出していたということです。

その後の捜査でも心と体の性が一致しないトランスジェンダーであることが確認されたということで、警察は刑事事件として扱うべきかどうか慎重に検討しています。

商業施設にはほかの客から「週末のたびに女性の服を着た男性がトイレを使っていて怖くて利用できない」という苦情が寄せられていたということです。

ジェンダーの問題に詳しい中京大学の風間孝教授は「性自認に合ったトイレを使いたいというトランスジェンダーの思いとトイレを使っている女性の不安が衝突した出来事だと思うが、性自認は目に見えないため周囲の人たちは外見などで判断するしかないのが現状だ」としたうえで、どうすれば多様な性を認めながら共に生きていけるか考えていく必要があると指摘しています。

当事者の説明
通報されたトランスジェンダーの利用客は捜査関係者に対して「職場などでは仮面をかぶって男性の格好をしている」と話しているということです。

昔から女性用のものが好きで男性に対して恋愛感情を抱いていたといいます。

周囲の目を気にして男性としてふるまってきましたが、家の中では化粧をしたり女性の服を着たりしていたということです。

「いくら話しても自分の気持ちはわからないでしょう」とも話しているということです。
専門家は…
今回のケースについてジェンダーの問題に詳しい中京大学の風間孝教授は「性自認に合ったトイレを使いたいというトランスジェンダーの思いとトイレを使っている女性の不安が衝突した出来事だと思う」と話しています。

風間教授は「性自認に合った生活をしたいという思いは尊重されるべきだ」としたうえで「学校や職場など限られた人が利用する場所ならどういう性自認を持っているか周囲の人たちも認識でき、理解がある状態で性自認にあったトイレを使えると思うが、性自認は目に見えないため公衆トイレなど不特定多数の人が使う場所では周囲の人たちは外見などで判断するしかないのが現状だ」と指摘します。

そして「性別を分けないトイレでどんな性の人でも利用できるという環境が整備されれば理想だ。本来は性自認に即して生活したいという思いと安心して生活したいという思いは決して対立するものではない。今の社会ではトランスジェンダーも女性もジェンダーの問題によって生きづらさを感じていることを認識したうえで、どうすれば共に生きていけるか社会全体で考えていく必要がある」と話しています。

※略※

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211210/k10013382491000.html