創薬ベンチャー「アンジェス」(大阪府茨木市、東証マザーズ上場)が、大阪大学と共同開発していた新型コロナ用「DNAワクチン」。「大阪ワクチン」「日の丸ワクチン」として、吉村洋文・大阪府知事が昨年(2020年)内の実用化に言及するなど前のめりの姿勢を見せていたが、治験では有効性が認められず、結局今年11月に最終段階の治験を断念した。

https://news.yahoo.co.jp/articles/127eb91d693b2c4934cbfdd01e733af09d49b357

 この結果を受け、アンジェスを持ち上げていた吉村知事や、すぐにでもワクチンが実用化するような思わせぶりな発言を各種メディアで繰り返していた同社創業者で大株主の森下竜一・大阪大学大学院寄付講座教授に批判の声が上がっている。

 12月9日発売の『週刊新潮』も<『吉村知事』一押し『日の丸ワクチン』頓挫で株価暴落への言い訳」>と題して、吉村知事を批判を掲載。一方、森下氏は大阪府や大阪市と関係が深く、府市の特別顧問や2025年開催予定の大阪関西万博では大阪府市パビリオンの総合プロデューサーも務める人物だ。

 それでは、アンジェスの株は一体どのような経緯をたどったのか。資金調達や株取得の手法は少々複雑な話になるが、しばしお付き合い願えれば幸いである。

■ワクチン競合開発リリース後に株価は5倍に

 アンジェスの株価は、昨年3月に新型コロナ「DNAワクチン」共同開発のリリース後、高騰している。公表前の2月末時点のアンジェス株は300円台に落ち込んでいた。しかし3月の共同開発リリースや、森下氏のテレビ出演、吉村知事がDNAワクチンの年内実用化を会見などで発言した結果、6月末には株価は2400円台と、5倍以上にまで高騰した。

 もし、公表前にアンジェス株を買い、高値圏で売り抜けていれば、数カ月間という短い期間で多額の利益を得られたことだろう。だが、アンジェスの19年12月末時点と、株価高騰後の20年12月末時点の大株主の状況を見ると、第3位の塩野義製薬(0.89%)、第5位の森下氏(0.51%)の保有株数は増減していない。株取引ということに限って言えば、森下氏は株価高騰の恩恵を受けていないように見える。それではなぜ、株価高騰を煽るような言動を繰り返したのか。