冨田宏治氏が喝破「大阪で維新を支持しているのは貧困層を憎悪する中堅サラリーマン層」

冨田宏治(関西学院大法学部教授)

改憲勢力は衆参両院で3分の2を上回り、議論加速にもハッパをかける。「身を切る改革」と称して行政を縮小する新自由主義の権化を誰が支持しているのか。
強さの原動力は? 大阪都構想の反対運動にも携わった専門家に聞いた。

ーー衆院選の結果をどう見ていますか。

維新については驚くほどの数字でもないし、小選挙区制がもたらす数字のマジックの側面もある。
比例代表の得票数は約805万票と前回の倍以上ですが、橋下徹代表代行の下、国政選挙に初挑戦した2012年衆院選では約1226万票を集め、54議席を獲得した。
希望の党とのすみ分けで小選挙区の候補者を降ろした前回17年とは打って変わり、全国に擁立したことから考えれば不思議ではない。
ただ、自民党、立憲民主党、共産党が減らした計30議席をそっくり取った形なので、維新独り勝ちに映る。
投票率上昇分の票が自民党に行かず、野党共闘にも向かわず、維新に途中下車したようには見えますね。

ーー自民党のデタラメな大阪市政・府政に怒った「格差にあえぐ若年貧困層」が維新支持層といわれますが、冨田さんの指摘は全く違いますね。

出口調査からも傾向が読み取れますが、維新支持層の中心は30代後半から50代の中堅サラリーマン層です。
第2の経済都市なので、大企業の関西支社や大阪支店が集積している。全国から転勤族も含むサラリーマンが集まり、相当な数になる。
都構想をめぐる15年の住民投票で、ガチの支持層を実感しました。

ーーと言うと?

住民投票は投開票日も運動できるので、維新は大阪市内の投票所300カ所に9人送っていたんです。3交代制で3人ずつ。オレンジ色のそろいのTシャツを着て。
すごい動員力ですよ。一方、反対派は自民から共産までの烏合の衆で、SNSで情報交換しながら「〇×投票所に誰もいません」なんて書き込みを見て慌てて駆けつけ、
有権者に反対をアピールしていたんです。僕は堀江の投票所でスタンディングをしていたのですが、周囲はタワーマンションだらけ。
ラフな格好ながらどう見ても中堅サラリーマン風の男性が三歩下がって歩く奥さん連れで三々五々やって来て、維新の運動員に次々に合図を送って
投票所に吸い込まれていく。一日中こんな光景を見続けたんです。愕然としましたね。僕も維新支持者は現状打破を期待する若年貧困層だと考えていたので。

ーー「三歩下がって」は今どき珍しい気もします。

要するに、彼らは転勤族なんです。専業主婦の奥さんや子どもとタワマンで暮らすような勝ち組。
維新の主張は絵に描いたような新自由主義改革なのだから、彼らが支持していると考えた方が分かりやすい。それこそ、目からうろこでした。
共に活動していた人たちもほぼ同じ感想でした。極端ではあるものの、彼らのメンタリティーを象徴するのが(元フジテレビアナウンサーの)長谷川豊氏の発言です。

ーーブログに書き込んだ「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!」ですね。
1年後、維新公認で衆院選に出馬して落選しました。

露骨すぎて喝采は送らないにしても共感はする。それが維新支持層の現実の姿だとみています。
彼らはかなりの税金や社会保険料などを納めながら、健康に留意し、食事に気を配り、ジム通いなどで医者いらずの生活を送っている。
かたや「自業自得の人工透析患者」は飲酒や塩辛い食生活の果てに健康を害し、保険診療を受ける。「年寄り」「病人」「貧乏人」はロクに負担をせず、
白アリのように社会保障を食い潰している。そうした強い不満や敵意を維新のポピュリストにあおられ、増幅させているのです。

ソースから抜粋
https://news.yahoo.co.jp/articles/a297fe2ba2ae9be165718f27cd586afddd491e83